第141話 決着

 重量級の天空の肉体は、弾丸となり、レオの肉体に突進し、その衝撃はレオを打ち砕く。


 筈だった。


 

 レオは、瞬間、開脚跳びで、天空を避けたのだ。


 ルチャのレスラーロープワークでよく行う、ムーブ、高い身体能力を持つレオに取っては造作ない事であった。


 

 天空は、硬い肉体では無く弾力のあるロープにぶつかり、その勢いのままもと来た方に、弾かる。

 レオは、両手を開き、その戻ってきた天空の肉体を捉える。


 

 戻って来た勢いを殺さず、勢いを利用しレオは、ブリッジの体勢になり、天空を捕まえたまま後方のマットに叩きつける。


 ジャーマンスープレックス。


 キレイなブリッジにその技の完成度の高さが光る、そして、レオがこの技を使う時には、別の呼び方がされる。


 ライジングジャーマン。


 得意の必殺技を、総合のルールで決め、場内は色めき立つ。


 ブリッジの体勢から手を離し、ゆっくりと姿勢を直す。


 (普通ならロープの反動を利用しないんだが、この体格を持ち上げるのはなかなか、難儀だからな)



 天空は、虚ろな目をしながらも立ち上がる意志を示している。

 頭からの出血も深く、このままでは命に関わる危険性もはらんでいた。


 これ以上は意味がない、レオはセコンドの真田に合図を送る。


 (競技の誇りを持っての参戦、自分では、止められない、止めてやるのもセコンドの努め)


 天空は、レオの視線の意味を理解しタオルを握りリングに投げ入れる。


 対総合、対ボクシング、対柔道、対空手と、仲間と共に準備しての参戦だったが、その努力は今回は無駄に終わる事となる。


 真田は、プロレスの強さを理解し、自然と賞賛の拍手を贈る。

 会場もまた、『八百長』『ショーマッチ』といった側面以外のプロレスを知り誰しもレオを賞賛していた。


 その拍手に、レオは、腕を上げ観客に答える。



 1回戦第3試合

 常磐天空対ライジング・レオ


 勝者・ライジング・レオ。

 

 

 

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