第135話 控室にて
Bブロック控室
櫂と石森はモニター越しに観戦していた。
立っている櫂は、石森に対して口を開く。
「そういえば、試合順変えた理由聞かないのな」
「まぁな、必要あれば言うだろ」
石森はそっけなく返す。
バンテージを固めその硬さを確かめるように、拳を掌に当てている。
「そうだな、今説明する必要が出てきた」
「どういう事だ」
石森は、櫂に視線をうつす。
「俺は、相撲対相撲なら横綱が勝つと踏んでいた、短期決着でも、長期戦でも、相撲の戦い方ならお互い五体満足で勝ち進められない、こっちの戦法は変えるつもりはない、『アウトボクシングに徹して、横綱の膝の限界待てば無傷で勝てる』、それは、俺の中で確定事項だったんだが」
石森は、櫂の戦術を聞きながら疑問を返す。
「簡単に言うが、相撲の突進力は侮れないだろ」
その事は予想内と櫂は答える。
「前方に対してはな、しかし、左右の動きには対応出来ない、多少の距離なら出来ると思うが、明らかな横方向に移動されたら、相撲には対処は難しいと踏んだんだよな」
「だが、相手がプロレスになってしまった、試合が一瞬で終われば俺たちは下手に疲労を残したくないから、こっちも短期決戦で、もし、長期戦になれば2回戦に合わせて戦術を変えずでもよかったんだがな」
そして、言葉を付け加える。
「とはいえ、このまま天空が無傷で勝ち残ると俺達には完全に不利だな」
「珍しいな、そんな事いうのは」
「そうか、どんな相手にも油断は出来んさ、しかも、準決勝の相手は、あの修羅か鏡花だ、深手を負って戦える相手じゃない」
天空は、蹴りを繰り出した、対異種格闘技戦を意識している、なら対ボクサーも既に考えているはず、フットワークを使ってのアウトボクシングも対策してると考えるのが当たり前だ。
櫂は、モニター越しに未だに、有効打を与えられていないレオに歯がゆく思いをし、石森に聞く。
「…勝ち残れるか」
無傷の対異種格闘技の力士とやるには、骨が折れる思いだが、弱音は吐けない。
「やるだけの事はやるさ」
石森は、そう答えた。
同会場─別室の控室
「あまり興味のなさそうだな」
木梨は、既にアップを始めている岩田に声をやる、一応、トーナメントで次の対戦相手になるやもしれない相手だが、観戦をしない岩田。
身体が暖まってきて、ドンドンギアが上がっているのを感じる岩田は、笑みを浮かべる。
「ああ、どちらが勝っても関係ないからな、1回戦を勝てば俺は棄権するからな」
木梨は、モニターにかぶりつく。
「となると、この試合の勝者は他の選手よりもかなり有利になるな」
岩田にとっていくつものイメージトレーニングをしてもたどりつことが出来ない勝利。
(俺があの石森に勝てればだけどな)
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