第129話 乱入者
記者会見は、定刻通りにスタートし、横綱不在の中で選手への質疑応答が続けられていた。
比嘉は、不機嫌を押し殺しその様子を見ていた。
その時、記者会見場の扉が突然大きな音を立て、開き数名の男女が入ってきた。
女子プロレスのエース、メリッサ。
メリッサの弟子にして、総合の試合で成果を見せたアスカ。
付き人ながら、バベル候補の1人を倒した山田。
そして、その3人の後から、乱れた服装で現れた男、ライジング・レオ。
全てのマスコミ、選手、セコンドが注目する。
「遅くなったけど、主役は後から登場って訳」
メリッサは、物怖じせずに、全体に伝える。
比嘉は、立ち上がりマイクを手にし、冷たく言い放つ。
「関係者以外は立入禁止だ、なんのつもりかはわからないが、退場願おうか」
その言葉には、レオが返す。
「バベルトーナメントの参加者だ、部外者ではない」
「そんな話はしらんな、誰が認めた」
「それは、俺だ」
横綱は頭から流れる血を抑えながら、横綱大竜関が現れた、横にはセコンド予定だった双鶴親方の姿もあった。
その様子から、レオと横綱の2人の間に何かあったのは容易に想像できた。
「本戦の出場権をかけて戦ったって事か」
空手家上総介は、察し、セコンドの芽郁はその問いに頷いた。
「横綱、勝手な事をされたら困る、このトーナメントの主催者は私だ、選考もこちらで行いメンバーを決めたのだ」
横綱は、真っ直ぐ目線を逸らさず比嘉に、反論する。
「このトーナメントの第一参加条件は『最強を自負する者、或いは強者と言われる者が推薦する者』、俺よりこのレオが強かった、最強を決めるトーナメントなら俺より参加の資格はある」
この提案を却下する事は難しい、このまま認めなければトーナメントの意義も失いかねないからだ。
やられた比嘉はそう思いながらも、レオのやり方に少し興味を抱く。
そして、全て選手に伝える。
「わかった、問題ない、特別に参加する事を認めよう、但し、ここから先、トーナメント参加者及び関係者に対しての暴行や脅迫と思われた行為をした場合、如何なる理由があろうともその選手は失格処分とする」
「Bの選手には、参加者変更をお詫びしよう」
天外は、思う所はあるが、横綱自身がなっとくしてるなら口出しつもりはないと思い、無言で頷く。
石森も問題ないとジェスチャーで示すが、セコンドの柊木は挙手し提案を述べた。
「参戦じたいには意見はないが、この有り様だ、試合の順番は変えてもらいたい、第3試合の俺達と第4試合の入れ替えだ」
「せっかく、レオ殿が盛り上げてくれたんだ、さっき説明受けたが、地上波では第3試合がオープニングマッチになるんだろ、せっかく異種格闘技を名乗ってるんだ、『相撲』対『プロレス』の方が盛り上がるだろ」
天空はレオを睨みつけ答える。
「俺自身問題ない、後でも先でも結果は変わりはしない」
「俺は、その事に対してどうこう言える立場じゃないが、オープニングマッチってのは興奮するな」
レオ、天空とも異論はない。
「まぁ、俺も試合順が一つずれるくらいなら」
岩田は反論なし。
石森は、柊木の顔を見たが、柊木はアイコンタクトを送り、後で説明する事を伝える。
「と、選手一同問題なしですが」
比嘉は、何となくだが柊木櫂の策が読めているがここで看破する事はしない、自身はあくまでも中立、他の選手がこの意図が読めないなら敢えて伝える理由などないからだ。
他のブロックの選手は、我感せずといった様子、なら意見を通しても問題ないと判断する。
「いいだろう、しかし、これ以上の予定変更は容認出来ない事はここで強く伝えさせてもらう」
そして、時はまた、バベルトーナメント当日に舞い戻る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます