第120話 本気と無関心

 臨戦態勢、構えを取るレオとは、反対に大竜関はほほを擦りながらレオを観察する。


 明らかな隙、今攻撃を繰り出せば、問題なく主導権を握れるが、それは出来ない、本戦へのチケットを賭けた戦いなのだ、それは、対等な状態ではないと判断されれば戦いの意味はなくなる。


 邪魔がいつ入るかはわからない、時間的な制限もある、そんな中でレオは横綱が戦う気にさせる必要があった。



 レオはゆっくりと口を開く。


 「俺が勝って参加する事になったら、大会で手に入れる賞金は全てお前にやってもいい」


 横綱は反応しない。


 (やはり、お金じゃない自身と相撲の誇りが戦う理由か)


 レオは、また、口を開く。


 「お金の話は置いといて、フェアじゃないだろ、お前達関取は2人参加して、俺達プロレスラーは一人も参加出来ない、与えられた試練も、話題作りにも一役かったつもりなのにな」


 横綱は、笑みを浮かべた。

 「それが、世間の評価だ、お前達プロレスラーは『レオ事件』で戦いの舞台へ上がる資格を失った」


 「自分達で撒いた種だ、その後十年プロレスは、異種格闘技戦を辞め、逃たのも、戦士ではないからだろう」


 ぐうの音も出ない返しだと思われた。


 当時のプロレスラーは、異種格闘技戦に近い事も行い、レオも何度か勝利を収めていた。

 嘘くさいけど、本気で戦えば強い。

 それが、あの一戦で全てひっくり返ったのだ。


 レオは、『レオ事件』を引き合いに出されることを予想していた、その話題で『プロレスラー最強説』を封じ込めれるのだから。


 レオは、あの事件の事を語りだす。

 

 「『レオ事件』あれは八百長だったんだよ」



 

 

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