第112話 古武術家 修羅天外

 天外は、コーナーから、少し離れながら、九条を見る、まだお互いの間合いではない。


 (腕は痛みだけだな、攻撃には影響はなさそうだが、あいつは呼吸が整えばほぼ変わりなく攻めれると思うが)


 九条もまた、構える。


 天外から仕掛ける右虎爪ジャブ。

 九条は、腕でガード、ガードした左腕捕まえる。


 腕の力で左の手を降ろさせ、空いた顔面にハイキックを繰り出すが、それも回避。


 (初めのジャブを回避ではなく、受けたな、回避しながら攻撃する余裕は戻ってないようだな、ならば、今が勝機)


 天外は、少し距離を取り腰を大きく落とし、両の手を後ろ手、自身の右腰のあたりに回した。




 「おいおい、あのオッサンかめはめ波うつぞ」


 モニター観戦の一ノ瀬は嬉しそうに、自室にいた神田に話すが、神田は無視した。


 「あのかまえ、『こさつしょう(虎殺掌)』」

 阿修羅はその構えを知っているが、完全に使いこなす事はできない。


 それは陸も同じであった。

 天外が得意とする型の一つ。


 九条が、見を選択しているのなら、仕掛ける事はないと判断。


 虎殺掌の一部しか知らない修羅以外の人、天上院は1人不安を感じる。


(その選択でいいのか、仕方られると対処が間に合わないんじゃないのか、天外)



 天外は、構えのまま九条に小さな声で語りかける、セコンドにも聞こえないほど小さな声かけで。


 「さっきいってたな、あの連打を耐えたのは過去にいるって、そいつはどんな化物なんだ」


 九条は、まだ距離が一定離れている事、その異質の構えの本筋は両の手で考え、両の手を注視しながら答える、あと、少しで試合開始と同等に動ける、時間は稼ぎたい。


 「その男は、ノーガードで5分くらい耐えたな、その怪物の名前は、プロレスラー、ミスターキング、お前も…」


 九条は言葉を途中で止める。


 天外は、一足飛びに間を詰めてきたからだ、油断を誘う為に声かけをかけたやもしれぬが、九条はその両の手に意識を集中し、ガードを固める。


 回避能力の高さから、見落としがちだが、九条の鋼の筋肉を破るのも用意ではない。


 鋼の肉体と天外の虎殺掌が今ぶつかる。


 

 

 


 

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