第104話 秘技・土蜘蛛
右眼の状態を確認したい千菊丸だが、このまま攻めに転ずるのか、それとも、そう考えているうちに帝釈は話を続けた。
「お前の防御技術は特別だから、攻撃に転じさせて隙を作らせてもらったぞ」
千菊丸は、呼吸が整ったが、攻撃には移らない、どうせ帝釈に毒はきいていないのだ、戦術を練る方が最善に思えた。
帝釈は、手を数度握り力が戻ったのを確認した。
「判断を間違えたな、効果が切れたぞ」
帝釈は、時間を稼ぐつもりで話を続けたのだが、千菊丸は気にしていなかった。
痺れていても瞬間的に動けるなら、毒の効果を期待しての戦術はとるつもりはなかったからだ。
「さて、再開といこうか」
帝釈は、呟く。
潰した眼の方向、死角となる部分から攻撃を行うため移動し、千菊丸は、咄嗟に頭部を固めるが、打撃は腹部に当てられる。
右の鉤爪突き。
そして、返しの左の正拳突きを顔面に当てる。
千菊丸も打撃で返すも、虚しく空を切る。
見えない所からの攻撃は、流石に捌く事は難しい、守りを上手く出来ない。
見える部分を餌に、死角から切り込まれる、視界が回復する兆候はなく、いたずらに身体には痛みが刻まれる。
しかし、帝釈の攻撃は打撃のみ、千菊丸は、そこに勝機を見出す。
(今の帝釈に投げ掴みはない、組みつけば見えない事は影響は少い、そして、奴は俺に投げはないと思っている)
近づきせず、中間距離で打撃を続ける帝釈。
(打ち続けろ、渾身の一撃を決めた時に、お前が俺の距離に入った時が決着の時、『秘技・土蜘蛛』を食らわしてやる)
秘技・土蜘蛛、乱破に伝わる大技、絡みつき相手を締め上げ、全身の骨を砕く技。
秘匿の技の為、一対一でしか使う事を許されていない技であるが、組技を警戒していない、そこに勝機を見出すしかなかった。
掟には反するが、このままでは終われない、千菊丸の中の武道家の血が勝利に拘りを見せた。
1回戦を勝ち抜けば、そのまま棄権をするつもりだ、手を見せたとしても問題はない。
千菊丸の覚悟に、帝釈も渾身の技で勝負をかけると心を決める。
戦いの終焉は近い。
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