第102話 乱破 忍術
千菊丸は、回復に回る帝釈に左右ワンツーで攻撃を行う、主は腕による打撃、防御を固める帝釈には有効打にならない。
勿論この試合を観戦している秦王は、少し嘲るように笑みを見せる。
「守りのテクニックは、当大会一と言っても過言ではないんだが、攻めの方は単調だな」
前田も同じ見解を述べる。
「普段は、ボディガードですからね、仕方ないと言っても、あまりにも普通すぎる」
異変に気づいたのは、当の帝釈だった、守りを固める腕に違和感を感じる。
大振りになった、千菊丸の攻撃にカウンターを狙うが、その腕には力かく、容易に躱され距離を取られる。
千菊丸は、大きく呼吸し、肺に空気をいれスタミナを回復させる、大きな隙を見せるが、帝釈は間を詰めれない。
脚にも痺れを感じた。
その帝釈の動きに、観戦していた選手の殆どは帝釈の年齢と鍛錬の怠りを考えた。
櫂は、その違和感の正体をスタミナには結びつけずに、思考していたが、その答えには至らない。
その原因の正体に、たどり着いたのは、修羅のみであった。
そして、その答えを、帝釈に千菊丸を伝えた。
「乱破忍術、毒菫(すみれ)」
帝釈は、千菊丸の言葉に耳を傾ける。
「すまんが、毒を使わせてもらった、死ぬほどではないが、身体には軽度の痺れを感じてもらう、『命を賭けた戦い』にはその痺れも致命的だよな、卑怯とは言うまい」
そして、先ほどとは程度が違う重さのある打撃を帝釈に繰り出す。
ガードの上からでも、怯み体制を崩させ、右の正拳突きで顔面を捉える。
次の試合の天外は、毒と気づき自分の対戦相手になる可能性が高くなった千菊丸に警戒を強めた。
「毒なのはわかったが、どのタイミングだ、流石にボディチェックは厳重に行っているはず、リングもとより、この刑務所に持ってこれるのか」
その答えは、阿修羅が答えた。
「口の中」
天外は、娘の阿修羅に視線を移す。
「あのもろてづきの後、チャンスだったのに、くわえてないにのマウスピースをなおすような、おかしな動きしてた、たぶんあの時に口の中の、クスリを使ってる」
確かに、口の中までは調べないか、自身に耐性があるとはいえ、強力な毒を使うとは思えない。
天外はにやりと笑う。
「痺れ程度の毒なら問題ないな、俺も阿修羅もいくつかの毒には耐性を持っている」
櫂も自分の思考から毒にたどり着き、対策を練っていた。
(たぶん、おかしな動作は口を触ったあの動きだ、帰化させた毒なら持続性はあまりないな、あの単調な打撃の間のみ、せいぜい一分ほどか)
「アキラ、息はどれくらい止めれる」
「なんだ、急に、わからないが、一分くらいは止めれるんじょないか」
もし、対戦相手が毒まで用いるなら、考える事は山積みだな、櫂は面白いと思い笑みを浮かべる。
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