第98話 異種 格闘  その2

 コンクリートの地下室、1人の男、九条と3匹の猛犬。


 猛犬は、九条の周りを走り同時に、九条に一斉に襲いかかる。


 左右の腕は、左脚に噛みつく。


 噛みつかれたが、九条はビクともせずに、表情一つ変えない。


 寧ろ猛犬の方が違和感を感じ、焦り動くが、特にビクともせずに、一呼吸を置く。


 (暇つぶしにはなったかな)


 左腕に噛みついたイヌを右手で、右腕に噛みついていたイヌを左手で顔面を掴む。


 万力の握力で握りしめ、犬の頭蓋骨が軋む、そして、鈍い音ともに骨が砕ける。

 ひしゃげた犬の顔面を地面に叩きつけ、鮮血を顔に浴びる。


 そして、もう一匹も握った拳を振り下ろし息の根を止める。



 モニターを見ていた、扇も前田も表情は、変わらなかった、当たり前だ、そんな様子であった。


 「くだらない見世物だな」


 前田は呟く。

 Sクラスの人間だ、駄犬が何匹かかってもどうにかなる理由はない。


 回避をしつつ、攻撃動作に入る無駄のない格闘センスと、犬の牙を通さない鋼の肉体。


 前田は呆れていたが、扇は満足そうだ。


 「そういうな、少しは身体を動かさないと訛る、わざわざ、必要以上に相手に技を見せる必要もないだろう」


 扇の使命は、元々、九条を使っての修羅の抹殺、この仕上がりなら、いくら修羅の当主とはいえ、この九条の相手になる訳はない。



 九条は、監視カメラに目線を送る。


 「これで終わりか、なら飯でもくれないか、試合までにはまだ日にちもあるんだろ」


 九条の感情には乱れはない。


 相手が誰だろうと関係ない、やる事をする。

 

 九条にとってのバベルのトーナメントは、それ以上でも以下でもない。


 ただの戦いだ。

 



 


  

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