第92話 条件下での戦い
拳王ジムにて、アキラと櫂は、先日のトーナメントの発表と開催時期を正式に知ったが、特にルーティンは変えずに朝からの練習を終え、その時間は、夜の8時を指していた。
アキラはボクサーだが、兼ねてより対異種格闘技も視野には入れていた。
だが、それは、ボクシングで頂点を極め、それからの事だったので、予定が早まってしまう形になったが、不安はなかった、親友の櫂のサポートもありその実力は怪我前よりも強くなったと自負していたからだ。
そして、新しい技も一つ実戦レベルとしての運用ができるだけ手応えも出来てきていたからだ。
早く戦いたい、試してみたい、それが今の石森アキラの心情だった。
上半身を脱いだ櫂は、着替えながら、石森に伝える、それは、石森アキラにとっては意外な言葉であった。
「アキラ、初戦だが、『試合は十五分以上』で決着をつけてほしい」
アキラは聞き間違いと思い、訂正を促す。
「十五分以上?十五分以下じゃなくてか」
「ああ、秒殺禁止だ、あと、練習したあのパンチも初戦は駄目だ」
「同日に試合があるんだぞ、スタミナを考えたら早く終わらせるにこした事ないだろ」
アキラの話も最もだ、次の試合は、どっちが上がって来ても、関取、体格差も大きい、出来れば不要なダメージはない方がいいし、疲労も残したくない、通常の意見だ。
だが、櫂の見解は、違う。
「お前はボクサーだ、普段1ラウンド3分という括りで戦っている」
櫂の話をアキラは遮る、
「3分以上連続で動く事へのスタミナの不安を言ってるのか、俺とお前の練習は連続で1時間動く事もある、今更、そんな事は、心配する事はないんじゃないか」
「嫌、練習で動くのと、殺気を持った相手と相対するのは、密度が違う、いくら俺やお前でも実践の中で1時間連続で緊張感を持って、最適なパフォーマンスをするには、ある程度体感が必要だ」
「只ではさえ、体格差で塩漬けにされたら、立技は不利だからな」
そんなもんかと、アキラは聞き入る、まぁ櫂が、言うなら間違いはないのかと言った感じだ。
「ライジングレオは、1時間試合した事もある、あれは格闘技とはまた違うが、お客の前で一定以上のパフォーマンスをするんだ、戦いながら抜く技術ってのは研鑽されてるんだろうな、試合中で抜く技術は一朝一夕で身につくものではないが、体感するのはいい経験だろ、どうせ格下だ」
金メダリストを格下扱いに、アキラは口元が緩む、確かに初戦は自分の土俵、負ける気は全くない、本場に備えて、敢えて不利な条件で戦う方が良いだろうと感じ、2つ返事で了承した。
ごねると左手だけで5分で倒せとか、言いかねない、そんな気持ちも少しあったが、そこは悟らせないようにする石森アキラだった。
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