第88話 Cブロックカード発表の裏側
熊殺鉄矢こと、吉田すぐるは、盟友となり名をもらった男『鉄矢』とともに、会見を見ていた。
海沿いの別荘、季節になれた観光客が増えるこの地域も今は閑散としており、夜となれば人気も少い。
鉄矢は、ある一件の責任を全て自分の責任にし、引退という形で一線を退き、組も関わりをなくす手切れ金としてこの別荘を渡した。
鉄矢は、隠居した身であったが、半年前に、比嘉からバベル参戦の推薦人として声をもらい、自身が、最強と押していた吉田を推薦したのだ。
吉田は始め、バベルのオファーには乗り気ではなかったが、自身の闘志が再熱するキッカケとなった阿修羅との再戦と恩ある鉄矢からの声かけで参戦を決意したのだった。
「修羅へのリベンジは遠いな」
鉄矢はそう吉田に話をかける、手には空のグラスが握られている。
「ええ、初戦の相手は、金メダリスト…ですか」
吉田の手は少し震えている。
「ビビってるのか、らしくないな」
「金メダリストが相手とは震えますよ、今までとは違う相手に自分の強さを証明できるんですから」
吉田は、約1年前に、阿修羅に敗北した年端のいかない女の子に半生をかけた強さを否定された、しかし、あの時は、恩人の鉄矢の不遇な対応に荒れていた時期、本来の力を出せなかったのも事実。
震える手を見つめていた吉田の静寂を壊したのは、突然のガラスの破壊音であった。
吉田と鉄矢は、音の方をみる、リビングの大きな窓をわり、3名の男が入ってきた。
「玄関もわからないのか、馬鹿たれどもは」
鉄矢は、イスに腰かけながら睨みつけ、そんな、鉄矢の前に吉田は立ちふさがる。
「久しぶりですね、鉄矢の兄貴」
そういって、侵入してきた2人の男の陰に隠れるような形で話しかける、頬のコケた男が話しかける。
誰かわからない鉄矢に、頬のコケた男は自己紹介などせずに、一方的にけしかける。
「当時、末端の下っ端の成り上がりなんて、知らないだろうが、過去の人間が出て、俺の『駒』がこのトーナメントに参加出来ないのは納得できないんだよな」
そういう事か、吉田は、ゆっくり腰を落とし構えをとる。
テレビでは、比嘉が対戦カードを伝えていたが、よもやこの二人の耳には入らない。
目の前の外敵の排除が最優先となった。
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