龍 〜総合格闘家〜

第83話 獅子と龍 その1

 横から枠を掠め取られた男は、そう思って車の中で東京の風景を眺めていた。

 

 「トーナメントがあるから、東京に来い」


 故郷の沖縄から、先輩にあたる比嘉から電話で呼び出された、その男は、大城刃。


 沖縄空手を習い、その技術を持って海外で総合格闘家として活躍、その活躍の裏には比嘉の師事もあった。


 比嘉は、大城は参加させるつもりだったが、枠を掠め取られた為、選考の為に大城は戦う必要が出てきた。


 そのためなの、大城はある場所に向かっていた、戦う為に。


 (面倒だけど、仕方ないさぁ、比嘉センパイに力見せるしかない)



 大城の乗せた車はある場所に、たどり着く。

 その場所は、覇道流空手の道場だった。


 大城は、長い髪を後ろに縛る、口元には笑みが溢れていた。


 大城は、特にこの状況は嫌ではない、戦う事は嫌いじゃないし、相手が覇道の館長と聞けば血が騒いで仕方なかった。


 (さてと、今日の夜には残りのメンバーを発表するってたから、早めに決めないと)


 大城は、道場に一礼をして入る、そこには、覇道上総介と覇道芽郁。


 上総介は、道着を来て、臨戦対戦、上総介にも選考の話は聞いていた。


 (トーナメントに呼び出しておいて、選考とは舐められたものだな)


 道場内に入った、大城はゆっくりと上総介に向かい合う。


 大城の車を運転していた前田は、大城は後ろに付き、試合を見守る。



 上総介は、大きく深呼吸し、右腕を天、左腕を地に構える。

 試合の始まりの合図はまだだが、上総介には油断はない、大城はそれを見て、悪くないと思う。


 大城は、まだ、右腕を後ろに、左手を開き、スナイパーの様な視線で上総介を狙う。


 

 始まりの合図はないが、戦いは始まっている。


 芽郁は、2人をしっかり見える位置に移動し、2人を見守る。


 前田は、意図的に芽郁の横に付く、観客は2人、バベルトーナメントの予選にもなりえる戦いが始まる。


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