第81話 花形 後編

 櫂が小学生の頃、初めて本当の父と姉の麗奈と出会った。

 櫂の母は普通の女性であった、天上院我狼に恋をして、その身に櫂を宿したが、櫂の平野愛は、その事を黙って身を隠し、未婚の母となった。


 そんな、愛を我狼は探し出して、初めて息子の櫂に出会った。


 櫂は、我狼を父とは思えなかったし、よくわからなかったけど、姉の麗奈は大人の都合を知ってか知らずか、櫂に普通に接した。


 「私麗奈、宜しくね」


 櫂はキックボクシングを、麗奈な天上院流格闘術を、我狼と愛は、一度だけの再開であったが、櫂と麗奈はお互い格闘技をつうじて仲良くなっていた。


 天上院流を自分の枠にはめ錬成する櫂にいつしか、麗奈は勝てない事が多くなり、キックで得られない知識を得てより櫂も強くなってきた。


 (俺ってもしかして最強)


 櫂は、そんな事を考えるようになり、また色々な流派に交流をもつ、そして、件の男、花形に出会う事になるのは、櫂が高校を卒業するタイミングであった。



 何時ものようなジムで練習している時に、奈が兄の名をだしたのだ。

 

 「俺に兄がいるんだ」

 

 櫂は、興味ないフリをしたが本心は違った、天上院の長兄。

 始めてあった時に強さを感じた姉の麗奈のような強い男を想像していた。


 (俺の方が強い)


 そんな事を考えていた櫂に、麗奈は実は兄が今、日本に来ている事、実は外にいて、会いたければ会える事を伝える。


 それが、初めての兄との出会いだった。





 時が流れて、現在。


 ホテルの中で3人は、テーブルを囲んでいた。


 「久しぶりだな、麗奈、櫂、さて、最近はどうなんだ、相変わらず『戦ってばかり』か」


 櫂と麗奈は、持ってきた食事を袋から出しながら答える。

 「いや、最近はあまり戦ってない、それより楽しい事見つけてね」


 「私は、まあ、ちょっと海外に遊びに行ったくらいかな」


 食事は、広夢の希望で、ホテルの料理ではなく、買ってきた食事を兄妹2人に準備してもらうのが3人の通例だ。


 「わざわざ、いいホテル来て、牛丼食べるかね」


 櫂は、イタズラっぽく呟く。

 

 「海外が長いとこーいう、日本食のジャンクフード食べたくなるんだよね」


 「といっても、この牛丼屋さん海外展開してるから普通に食べれるよね」


 麗奈の返しに、広夢は大声で笑って返す。


 「さて、最近巷を騒がしてる『バベル』ってのはどんな感じなんだ」


 広夢は、世間話の延長で話をする。


 「俺はセコンドとして参加するけど、兄さんが参加したらいい線いくんじゃない」


 「俺は宇宙人だ、地球人の格闘大会に出る訳にはいかない、それに俺は戦うのは嫌いだし、俺よりお前の方が強いだろ」


 櫂は、深妙な顔をした、たしかに自分の方が兄より強い、それは素人とプロ通常で考えれば当たり前だ、でも、もし、兄が本格的に鍛えたらと思うと、少し背筋が寒くなる。


 「俺は、右ローキックしか使えないからな、でも、お前がセコンドってなかなか見所のある男見つけたんだな、お前は惚れるなら俺も応援しようかな」


 広夢は、そう言って笑顔を見せる。

 

 「バベルトーナメント、なんかきな臭くなってきたから、気をつけな、あのチーホイが絡んできてるって情報来てるから」



 麗奈は心配そうの表情を見せるが、櫂は気にする様子は見せない。


 「チーホイだろうがなんだろうが、俺とアイツの邪魔するなら叩くだけさ」


 櫂は、イタズラっぽい笑顔を見せ、それから3人はとりとめない話で夜を過ごす事になる。


 

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