修羅 〜古武術〜

第79話 父と娘 


 「ついに発表がありましたね、お父様」


 長い青い髪に綺麗な大きな瞳、身長が低く、その風体から幼さがにじみ出る十代の女の子。


 修羅阿修羅、その若さで類を見ない強さを見せ、バベルの前身と言われたアルティメットトーナメントの参加者を一蹴、また、裏格闘会の実力者でもあった熊殺をも智力でもって制した事もある女性。


 しかし、その右腕は折れているらしく、包帯で固定しており、顔にも小さな怪我が見える。


 何かしらの戦いの跡を感じさせる彼女は、父にバベルトーナメントの事で口を開いた。



 「そうだな、それが、一つの条件だったからな、お前も先の戦いで色々学んだと思うが、また、このバベルトーナメントもまた勉強になるはずだ」


 短髪で、道着をきている中年男性、阿修羅の父にして現修羅の当主、天外。


 『戦わずの修羅』と呼ばれた天外であったが、このバベルトーナメントには参加する事でになる。


 理由は2つ、全力で戦えるルールである事、そして自身の父親と因縁のある鏡花帝釈が出ることであった。


 「鏡花は、お前の祖父の戦いにおいての心残りの相手、代わりに俺が当主として相手をしないといけない相手だ」


 「鏡花にも確か、兄妹がいた、歳はお前に近い、もしかしたら巡り巡って、お前と対峙する時があるかもな」



 阿修羅はピンとこなかったが、目に見えない因縁の糸はあると思い、その言葉を心に刻む。


 「ルールに乗っ取っ正式な試合なら、柊木さんと戦ってみたいですかね」


 片腕を故障したトラブルの時に、出会った強者の名を出す阿修羅。


 天外は苦笑する。


 「奴は強いが、奴の目指した強さと修羅の求める強さは別の道、交わる事も奴の性格上難しい、もし戦うなら『交わった場所、戦いの経緯』で勝敗はわからんな」

 

 天外はそう言って、視線を中庭へと移した。


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