第64話 若獅子 中編

 覇道夫妻が道場に入った時には、30名程の道場生が正座をし、2人を待っていた。


 その道場生の前にまた2人、道場生をまとめるように座っている。


 宗円の内弟子でもあった、上杉と武田。


 上杉はスキンヘッドの日本人離れした身長から、国内空手では敵無しとし、武田もまた、身長はないまでも丸太のような腕と脚で幾多の猛者たちを打ちのめしてきた、覇道の両柱である。


 上杉は寡黙な性格だが、武田はどちらかというと戦い以外は気さくなオジサンといった雰囲気から、人徳もある。

 

 その武田は座しながら、一例し、2人を迎えいれる。

 

 「待たしてしまいました、武田さん、上杉さん」


 「いえ、時間通りですよ、『館長』、集まれるの全員揃っております」


 一回り以上離れた者に対しても、周りが上下関係を間違えないように武田は配慮する。


 一時代を気づいた流派も今や衰退し、道場生はほぼ十分の一以下となった。



 その理由は、宗円の死だけではない。


 宗円の跡を継ぐのは、誰が相応しいか道場生内で議論が起き、武田か上杉その両名に絞られた。


 国内外が実績を残している上杉か、実力と人望を備える武田かと二分していた。


 しかし、上杉も武田も辞退、二人の意見一致する継ぐものは始めから決まっている覇道宗円の子であるべきだと。


 その二人の気持ちに門下生は、落胆する者が多く現れてしまった。


 覇道宗円の子とは、覇道芽郁、覇道の一人娘であった。


 宗円の強さに憧れた者は道場を辞め、また、上杉、武田派の人間は、自ら流派を立ち上げ、上杉、武田を迎えいれようと道場を去る、昔気質が多かった覇道流は、芽郁が館長となった3年ほどで完全に過去の存在となってしまった。



 「みんな集まってくれてありがとう、まだ、館長と呼ばれるのは、慣れないがここから、また皆よろしく頼む」


 門下生の1人が手を上げて、館長に質問する。


 「比嘉秦王は、覇道に何かしらアクションはありましたか」

  

 質問が答える前にまた、別の者が質問する。


 「トーナメントには参加するのでしょうか」

 「館長自身が参加するのですか」


 皆の強い気持ちを上総介は、片手を上げ、静止する。

 皆が熱くなるのには理由があった。

 

 以前、アルティメットユナイテッドからオファーが来て、それに上杉は参戦したが準決勝敗退という彼らの中である意味で汚点を残してしまっていたのだ。


 「参加はする、選手はもちろん…」



 道場内に緊張が走る。

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