王の拳 〜覇道流空手〜

第63話 若獅子 前編

 王の前に道はなし、王の後に道はできる。


 覇道流空手、一昔前は、空手といえば覇道、覇道といえば空手という位に圧倒的な知名度を持っていた、正確には、王の拳を持つ覇道宗円の武と得が人を集め魅力していたからだ、修羅に双璧をなすと言われた宗円を負かしたのは病魔だった。



 それから、十年後。




 墓参りをする道着をきた青年がいた、幼い顔立ちに少し癖のある長めの髪、齢18を数える。


 覇道上総介(かずさのすけ)、童顔の顔とは対照的に筋肉質の身体に何よりも異様なのはその拳、その拳は大きく鍛えられていた。


 「先代、やっと覇道の名をまたこの世に知らしめる時が来ました、また、この日本に覇を見せつけてやります」


 「やっぱり、ここにいたの上(かず)」


 ボブカットの1人の少女、同じように道着をきた女性というよりはまだ、女の子という雰囲気の彼女は、上総介をカズと呼ぶ。


 「大事な日だからな、メイ」


 その彼女を上総介はメイと呼ぶ、本名は覇道芽郁、2人は、兄妹ではなく、夫婦である。


 「それはわかるけど、武田さんとかまってるよ」


 「それは、不味いな、武田さん普段温厚な分怒ると怖いからな」


 「しっかりしてよね、覇道流空手三代目」


 イタズラっぽく笑う芽郁に、道着の帯と心の帯も締める上総介。

 

 

 「ああ、任せてくれ、覇道の前に道はなし、これから先の武道の道は覇道が、嫌、俺がしっかり作るから見守ってほしい、メイ」


 「だから、武田さん待ってるって」


 決めた表情を冷めた様子で返す芽郁。


 そう言われ上総介は、仕方ないといった様子で、気持ち切り替え、全速力で駆け出し、武田の待つ道場へ向かう。


 若い2人の艱難辛苦は始まったばかり。

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