金の左を持つ男 〜ボクシング〜

第61話 暴言者 前編

 知名度と強さは比例するのだろうか?

 それは、否。

 強いものが有名とは限らないし、有名なものが強いとは限らない。


 

 ある程度の肉体を作り上げれば、それなりの強さの説得力ができる。


 そしてマスメディアに露出し、自分の強さを雄弁に語り、自分の格下の相手KOすることができれば世間一般、大衆的にはそのものの強さが認められるものもある。


 実際強さがあったとしても派手KOがなければ高度なテクニックは大衆受けすることはない。


 つまり、知名度と強さは比例することはないだが、有名ではないイコール強くないというわけでもない。


 そこである人のボクシングの選手。

 男の名は岩田貴明、金メダリストである。



 この男は日本人初の重量級ライトヘビー級ボクシングの金メダリストでありながら、知名度もその界隈以外なく、人気もない。


 そんな男がバベルトーナメントに参加するという機会を与えられたのは、何かの運命なのではないだろうか。



「では、質問に入ろうと思いますが、その前に、まずお名前と競技をお聞きしていいですか」


 あるホテルの一室で黒服の前田と単発金髪の目つきの鋭い堀の深い男が座っている。


「岩田、ライトヘビー級の金メダリストだ」


 バベルトーナメント、異種格闘技戦について意気込みを聞きたいと、黒服は伝える。


 「異種格闘技戦そのものには興味ありませんね。だって、俺ボクサーで金メダリストだが、実際ボクシングと総合格闘技を戦う時ってだいたいローキックで負けちゃいますからね。出たってあまりメリットないんじゃないですか?呼ばれたら出るって感じですかね?それに他にボクサーいるんでしょ?それがボクサー代表ってなるのは心外かな」


 長いコメントの後に、挑発的に伝える。


 「もう1人のボクサーは、石森だっけ、怪我上がりの軽量級が金メダリストさしおいてボクサー代表って笑わせてくれる」


 黒服の前田を少し笑う意外に嫌味な男だなとか感じた。

 

 「ルールっていうのは何でもありなんだよな、蹴りを使ったり、組技の方が有利なんじゃないか」


 負けることに保険をかけるこの男に前田は疑念を感じる。

 なぜこの男選ばれたのか?なぜこの男柊というキックボクサーは推薦したのか?その疑問の答えは柊しか知らない。


 このコメントは、後日、石森と柊木の耳に入る事となる、またそれは次の話し。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る