黒服 〜スカウト〜

第59話 選考会議 その1

 流石な観察眼だな。


 比嘉秦王は、そう言ってスカウトの黒服に言い放った。

 黒服の男は、前田といい、普段は、比嘉の命を受け『強者』の選考を補助する仕事をしている。


 比嘉が目星をつけた強者だけではなく、自薦、他薦もある為、1人ではなく数名でトーナメント候補者を選んでいる。


 前田は、その取りまとめをしているリーダー的存在である。


 「創作物では、柔道のメダリストは当て馬にされるものですが、実際は、才能の塊です、彼らメダリストは限りなく強者の部類にいれて問題ないかと」


 同意見だと、比嘉はファイルを、選考済み、採用にいれる。


 一息つき前田に話をする。


 「あのチーホイの13人の懐刀の1人だけではあるな」


 闇の権力者チーホイ、そのチーホイの側近である13名の部下の1人である、前田、彼の名前は偽名である。


 13名は、人種も性別も国籍もバラバラで、チーホイの命令の元、3名が身辺警護にあたり、他は国外等で各任務をこなしている。


 前田は、少し笑い返事をする。


 「といっても、貴方は私の主を信用はしていない、ですよね」


 チーホイもまた、本名ではなく、あまり表にも出ない、その13名だけが、チーホイを知り、チーホイもまた、誰も信用はしていない。


 「どうかな、だが俺は、お互い利害関係だけで成り立つ方が信頼できるがな」


 そう言って、またもう一つの候補者に戻る。


 横綱大龍関、知名度は完璧だが、やはり膝の故障が気になる。

 「大龍関か、本人としては、別の力士、天空を推していると聞くが、お前の意見はどうだ」


 秦王は、前田の意見を探る。


 「大龍関のネームバリューは、大きい、しかし、この天空は、天上院も推薦していましたし、何よりも可能性の部分ではかなりの可能性があるかと」


 そして、ひとつ重要な部分を念を押し伝える。

 「天上院学園の選考試合で、天空は真田剣之介という剣道家と戦い勝っています」


 真田、比嘉はひとつ思案し、言葉を紡ぐ。


「真田、真田理真琉かたしか、息子に伝承されなかったと聞いていたがもしや」



 「はい、息子ではなく、孫に繋がれたかと、試合自体は剣道として戦ったとはいえ、天空と真田は関係者、天空をトーナメントに出せば、縁が出来ます」


 前田は、天空と大龍関を量りにかける事を提案。


 2人の打合せは、まだまだ続く。



 

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