第52話 誉 中編
天上院の興味は、出場選手へと変わっていた。
天上院流武術と名乗っているが、実際、天上院家が支持していた強者とは、『修羅』、修羅に対しての思いは多くあるも、その事実を知り尚且つ、修羅がトーナメントにでるので、あれば選考から自身が外れるのは納得できる部分は一理あるからだ。
黒服は、伝えて良いものと一瞬考えるがら比嘉から『目的の達成ならある程度の事は目を瞑る』との言葉がある事から選手の事を天上院に伝える。
「先ずは決まった選手は、鏡花帝釈、囚人であり、素手で人を多数、殺している武術家」
「総理のボディガードで、忍者の乱破千菊丸」
話の途中で、天上院が口を挟む。
「鏡花から決まるとは以外だな、一番参戦が厄介と思っていたんだがな、それよりも『忍者』とは何かの冗談か」
「いえ、総理が鏡花帝釈の参戦を認めるかわりに、自身のボディガードの乱破千菊丸を出場させる交換条件なので」
実際、1回戦第1試合はほぼ確約している。
「あとは、キックボクサーであり、ラウェイの選手北岡兵衛、そして、比嘉の興味からレスリングの鞍馬一仁」
隻腕の選手か、噂では耳に入っている、その実力も折紙つきということも、天上院は知っていた。
しかし、鞍馬の名はまったく表も裏でも聞いた事はなかった。
だが、比嘉秦王が気になるなら、ある程度は期待していると思い深く頷く。
ここからは、選考段階と付け加え、黒服は続ける。
「裏からはまた、暴力団からの推薦で喧嘩屋の一ノ瀬大地と熊殺鉄矢の2人だ」
「表では、キックボクサーの柊木櫂の推薦でボクシングの石森陽と、相撲からは横綱大龍関」
黒服は、まず、そのメンバーへの、天上院の意見を求めた。
「噂レベルでも一之瀬の事はきかんな、熊殺は、アンダーグラウンドは、一時期敵無しと呼ばれていたが、実際相応しいのか」
天上院は、熊殺が阿修羅に負けている事を知っている、幾ら実力者とはいえ、年端の行かない娘に負けた者を出すのはいかがと感じた。
「熊殺と阿修羅の事は勿論知っている、しかし、推薦者の強い希望がありまして、石森についてはどうですか」
以前、天上院は、自身の方が上とコメントしていたが、その質問に、質問で返す。
「『キックの櫂』は出場せずに推薦か」
「はい、柊木自身に何度かオファーしていますが、本人はその気はないと」
天上院腕を組み、視線を逸らす。
「石森自身というよりはボクサーの型組なら俺の方が上という気持ちは変わらん、しかし、櫂がセコンドにつき、1回戦を勝ち抜き、対他流派、真剣勝負を体感できるなら勝敗はわからんな」
プライドの塊と思っていた天上院からの辛勝な言葉を聞き、黒服は意外に思った。
そして、ある噂を思い出す、その事を質問しようと悩み考える。
下らない与太話を信じているのかと思われたくない部分と、どうしても気になってしまう部分で黒服は聞きたい欲求に負けてしまう。
「すみません、下らない話ですか、『天上院のあの噂』についてなのですが」
気の所為だろうか、室内の温度が少し高くなる気がしてた。
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