第49話 髭男爵 中編

 『力を証明してみせろ』

 秦王からの言葉にも、鞍馬は微動だにしなかった、警戒さえしていない、もし、今秦王が攻撃を行えば、秒殺できる気もした。


 わからん男だ、秦王ほ、拍子抜けし、言葉を続ける。

 「お前のように売り込む奴がいる、まぁ、そいつは推薦だが、俺自身は評価していない、その選手と戦ってもらう」


 「『最強』なら逃げないよな」


 敢えて勝てば本戦に出れると伝えず、煽る、売り込むのが本懐ならリスクしかない、調子のいい事を言って逃げると思ったが以外な返事が帰ってくる。


 「わかった、出来れば今日戦いたいな、私もあまり暇ではないからな」


 そう言って口髭に手をかける。


 「そうは、言っても相手にも都合がある、明日また、後で指名する場所に来てくれ」


 鞍馬は少し残念そうな顔を見せて、部屋を出る、その後ろ姿も隙だらけだ。


 (ある意味興味深いな)



 そして、次の日の同じ時間、秦王が管理するジムのリングに鞍馬は立っていた。


 秦王も忙しいながら少し興味を持ち観戦する事にしていた。


 戦う相手は少し遅れてくる事に鞍馬は少し不満の顔を見せていた。

 「時間にルーズなのは、紳士としてなかなか頂けないな」


 その言葉と同時にジムに2人の男性が入ってきた。

 1人は、帝国プロレスの花形レスラー、矢口貫、日本人離れした190センチの100キロ超え、帝国プロレスは、シンプロレスと違って『王道真剣』、帝国プロレスのプロレスは本気で強いを謳っていた。


 もう1人は、マネージャーの荒谷だった、寡黙な矢口と違って荒谷はベラベラと喋り倒す。


 「いゃー、比嘉さんすみませんね、遅れて、なんせ忙しいもんですから、この矢口は、見て下さいよ、この筋肉で動けるんですから、ぜひバベルに参加したら、話題なりますよ」


 「今日は、予選みたいな形ですか、でも、素人さんと矢口戦って大怪我させてしまったら、申し訳ないですが、大丈夫ですか」


 帝国プロレスは下火のため、このトーナメントを利用しようとしているのは、明らかであったし、何よりも比嘉は、『プロレス嫌い』であった為、トーナメントにプロレスラーを参加させるつもりは毛頭なかった。


 しかし、ある程度の実力はあると思い、こういう相手の露払いに利用するつもりであった。

 

 (まぁ、こんな輩は、何回か戦わせたら理解して引いていくだろう)


 矢口は黙ってリングに上がり、鞍馬と対峙する体格的には、お互い引けは取らない。

 鞍馬の相手は、トッププロレスラー、鞍馬の隠された才能を披露される時がくる。


 もし本当にその才能があるならだが。

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