第37話 影 中編

 悩む総理を連れ、車はある高級ホテルに向かい、その駐車場に車は止まる。


 乱破は、安全を確認する為に総理より先に車から下りる、あたりを見渡し、乱破独特の雰囲気、間を感じ取り、下りてきた総理に戻るように促す。


 それと同時に、何台かの車の影から人が出てきた。

 黒いマスクをしている為、不審人物なのは間違いない、乱破は不審人物がどうとかではなく、それが総理に敵意を向けている事をすぐ察知した。



 (相手は5名)


 乱破は、イヤホンマイクで他の不審人物がいないかの確認を別の車両に伝え、自身も、総理に車に戻るように促した。


 しかし、総理は、それを拒否。


 「なぜ、暴君の為に私が、道を譲らないといけないんだ、乱破千菊丸、なんの為にここにいる」


 乱破千菊丸は只の秘書でもSPでもない、乱破は、何十年も前から、正確には何代も前から、伊藤家と家同士の主従契約を結んでいる、現代の『忍』であった。


 乱破は、その言葉でより前に進み、冷たく相手を睨みつける。


 「誰の差し金かは聞かないし、お前達から背後に繋がらない事は承知だ。一応言っておくが、痛い目を見たくなければそのまま帰ることオススメする」


 不審者は微動だにしない、乱破はポケットから小さなアルコールスプレーを何度も身体に吹きかけ、眼鏡を外す。


 「覚悟がある相手と認識した遠慮はしない」


 不審者は先ず1人で向かって来る、ほぼノーモーションで乱破は眼鏡事相手の顔面を殴りつける。


 殴られた相手は、眼鏡が砕け痛みでうつ伏せになる、痛みで動きが止まる、乱破は対した相手ではないと認識。


 今度は、2人で襲ってくる大振りの攻撃を回避ではなく、身体を使って受け、重心を上手く使って転ばす。

 転倒しただけでダメージはない、追い打ちをかける前に、残りも襲ってくる。

 その相手には、乱破は構えをとる襲ってくる相手は素手ではなく、警棒ともう一人はスタンガンを持っている。


 警棒の振り被った攻撃も右腕で受ける、警棒の不審者は相手が怯むと思ったがそうはならなかった、警棒の不審者を盾にしスタンガンの電気を浴びせる。

 スタンガンの男にもスタンガンを持っている方の手を捻り転ばしスタンガンを奪って、遠くに放る。


 電気受けた男以外は、ほぼノーダメージ、立ち上がり乱破を取り囲む。


 圧倒的不利な状況だが、乱破に焦りは無い。


 寧ろ男達の意識が乱破に向いている事に言葉が漏れる。


 「やはり、素人だな、『乱破』の敵ではない」

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