第34話 デビル渡邉 その2

 試合は進み、レオとデビルのメインとなった。


 対戦といってもライジングレオ、山田、タイガー岡田組対デビル渡邉、ヨウタ、バットラング組の3対3の6人タッグマッチである。


 山田はまだ新米、タイガーはレオよりも歴の長いベテランレスラーだ、対応力やレスリング技術は業界トップクラス、対しデビル組はヒールとしてマットを賑やかしているユニットチームである。


 まずは、山田とバットラングとマッチアップで試合は始まった。

 バットラングは、身長2メートル超え体重も公式では120㌔と言われる巨漢の外国人選手、上下黒のシャツとズボンの彼はのっそりとリング中央に向かう。


 山田は、そんな動きが遅いバットに勢いよく突進、ショルダータックルを繰り出したが、バットの肉体に逆に吹き飛ぶ。


 観客がどよめく中、山田は直ぐに立ち上がり今度はチョップで攻めるがダメージはなし、バットが大きく振り被って繰り出したその場ラリアットにまたしてもダウン、そのまま倒れた相手にストンピングをバットは叩き込む。



 格闘技というより、ショーに近い試合展開、体重差もそうだが、攻撃に対してもガードなどはせずそのまま受けている様は、まさに『プロレス』であった。


 バットはひとしきり踏みつけた後、ヨウタにタッチする金髪で無骨な顔に、白のコンタクトをつけてパッとみただけで個性という存在感が際立っていた。


 山田を無理に立たせて、左右のローキックから身体を大きく回転させてバックブローを決め、雄叫びを上げる。


 ヨウタ得意のコンビネーションだ。


 山田はいいように、やられているが一瞬の隙をつきヨウタを掴みロープに振る、そして戻ってきてタイミングでドロップキックを叩き込む。


 山田は、タイガーにタッチしタイガーはリングイン、歓声が上がる。


 デビル渡邉は、その光景を見て、試合中であるがある考えが頭によぎっていた。


 地方の興行で、空席もチラホラ目立つ、ファン以外の関心は皆無、これが今の現状か、やはり何か大きな動きをしないといけないかもしれない。


 だが、デビルは自身が異種格闘技戦に出ようというつもりはなかった、過去、路上で空手家と喧嘩をした経験があり、打撃の質が違い、路上では、思うように身体も動かなかっし、組みに行くまでの戦略もその時には錬れなかった。


 負けはしなかったが、勝てるとも言い切れない内容で結局は、痛み分けという形で終わった。



 (俺じゃ駄目だ、戦うなら、若く対応力のある選手、もっと欲を言えばネームバリューも必要だよな、そんな選手は…)


 デビルが考え事をしていても試合は動く、ヨウタは、タッチを求めてきた。


 そのタッチに応え、デビルはリングに入る。


 その交代に呼応するように、ライジングレオもリングに入る、今日一番の歓声と期待感が会場を包みこんだ。


 

 

 

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