闇 ━古武術━

第29話 過去 前編

 少し緊張した足取りで、先を歩く看守の後をあるく男、記者の亀井。


 ここは、北海刑務所、最北に位置するこの刑務所は、国内で最も過酷な刑務所として知られている。


 年間最大の死者、重症者を出しているが、それが世間に報じられる事はないし、誰も気にしていない。


 死刑に出来ない囚人や都合の悪い事を知っているものか収監されるとうわさされるこの刑務所。


 最寄りのまちから車で2時間かけてきたのには、理由がある。


 帝釈に取材をするためだ。


 闇で息づいていた『古武術』が表に現れた事件、それについて男は調べ取材をし、一冊の本にまとめるつもりだった。



 男は、もう業界は長く、年もとった最後にこの事件を調べ世間に、訴えかけるなにかを見つけたかったのだ。


 看守が足を止める。


 「会話は全てのこちらもきいている、間にアクリルのカベがあるがあまり近寄るな、物の受け渡しも禁止、なにか不審な行動をとってらそく中止にする」


 ドアに手を掛けて、思い出したように付け加える。


 「会話のやりとりの記録は、レコーダーを使用願いたい、ペン一つでもやつにてを渡れば私達で彼をおさえるのは難儀だ」


 看守はそう言い切って、ドアをあけて、中に、誘導する。


 アクリルの向こうに人影がみえる。

 帝釈だ


 長い髭に、髪、少しこけた頬、四十代と聞いていたが、実際はもっと歳を重ねているように見えた。


 手には手錠、足枷もされている。


 眼光は鋭いが、家族を皆殺しにし、暴力団の組員をも殺した男には、正直見えなかった。


 体格も良くは思えなかったし、栄養的に満足とも見られなかった。


 亀井は、心の中で少しがっかりした、やはり噂は噂、大袈裟に吹聴されたのだろうと。


 しかし、せっかく来たのだ、話をしても問題ないと思い話を切り出す。


 

 帝釈の過去の話を聞くために。

 

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