未来
第26話 笑顔 前編
涼香は、幼い頃からよく周りを気にし合わせる事の多い子だった。
嫌な事があっても内に抑え込むタイプの。
穏やかで優しいそれが、幼い頃の周りのイメージ、その為、隠れファンの多い子だった。
中学生、高校と地元の学校に通い、石森とも同級生として認識はしていた。
だが、何人かいる同級生の1人、その程度だ。
あの光景を見るまでは。
石森がボクシング部の選手と練習していた時だ。
石森は、声を荒げ、何人かの部員に訴えていた。
「なぜ、簡単に諦める、あと少しの踏ん張りが自分を強くするんだ、言い訳をして楽な道を選んだ先に強さを手にできるのか」
その熱い訴えを周りは冷めた様子で勝手にやってろと言わんばかりの態度で石森から離れた。
涼香は、石森は自分と同じで大人しいタイプと思ったていた、だが、実際は譲れないものには熱くなる芯の強さを持つ人なんだと。
(私と全然違うな)
その日から、目線の先に石森を捉えるようになり、卒業と同時に気持ちを伝え、付き合うようになった。
涼香は、専門学校を卒業し、石森を支えると同時に自分の夢も追う彼女。
そんな彼女に同級生の女性達の目は厳しかった。
将来どうするの
ヒモと付き合っててもしょうがなくない
ボクサーって仕事なの
もっと、いい男みつけないと
周りの心無い声に、彼女は得意の笑顔でスルーする、理解されない人には何を話してもしかたない、自分の中一本、芯をしっかりもてば問題ないのだから。
今日も、バイトを終え、帰宅へと急ぐ。
最近、頑張り過ぎている石森が心配でもあった。
そんな彼女の1日の終わりに、スマホが知らせたのは残酷な知らせだった。
急ぎ病院へ行く涼香、知らせとは、石森が交通事故にあったという事だけ、呆然とし話の内容は理解出来なかったが、病院の場所だけは頭に刻み込み歩を進めた。
なんとか病院でたどり着いて目にしたのは、ベッドで横たわる石森の姿だった。
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