第24話 友 後編 その2
あれから、一週間、2人は練習を一緒に行うようになり、練習の中、石森はミットを持ち櫂のパンチを受けていた。
威力のある打撃、コンビネーションも問題はない、石森は少し間を外し、櫂を誘いこむ、櫂は入り込むスピードは上々、左ジャブで入り、右フック、返しの左ストレート。
しかし、ボクシング技術は、石森が上、最期の左ストレートに合わせて、クロスの右フックをボディをミットで触る。
何度かミットを打って反省点や課題を話をする。
「やっぱり、無意識に重心がキックになるのが出てるかんじするな、無理にパンチに拘なくても」
櫂のレベルだと、パンチ主体からキックを打つ構えまで、シームレスに変わり、隙がなく戦術を変える事が出来るが、今回はそれが足枷になっているよう石森は感じた。
「いや、せっかくだからさ、その無意識もある程度抑えたい、じゃなければその癖を利用されかねないからな」
櫂は、そう言って、手を差し出す、ミットを受け取り、ミット打ちを交換する。
「じゃあ、今度は俺は対ジャマイカボクサーの練習といきますか」
「ジャマイカじゃなくてメキシコだ」
軽口を叩きながら、お互いに向かい合う。
ミットを叩く音は、石森と櫂は同等の様に思えたが、石森は体勢が崩れても問題なく打てるほど強い体幹と足腰を有している。
いくつかミットにパンチを当てた後に、櫂が左右のコンビネーションを繰り出す、それを上半身の動きで回避し、反撃の手を出す。
ミットから伝わる感触の後に、櫂は、石森に提案する。
「上半身じゃなく、バックステップで回避して反撃してくれ」
その提案に今度は、石森はバックステップで回避して、直ぐにその場に戻り、左ジャブを出そうとするも櫂のミットが攻撃を止める。
バックステップで回避する分、反撃の手は数瞬遅れている感じだ。
「バックステップからじゃ、反撃が間に合わない、やはり上半身で避けるほうが得策だ」
「嫌、アキラお前なら入り込むスピードを上げてパンチが間に合う、上手くいけば相手からカウンターも取れる」
櫂は、石森の提案を却下する。
石森は、心の中で不満に思うも、バックステップから打撃の練習を何度も行う。
(上半身で避けるほう反撃が早い、腕での打撃ならバックステップまでする必要は)
ゴングがなりミット打ちを終わる。
「不満って感じか」
櫂は石森の表情を読み取る。
「嫌、そう言うわけじゃないが」
石森は回避の本当の意図をわからない、しかし、櫂はしっかりと石森の事を考えていた。
「なぁ、アキラ、俺とお前で、スパーリングしないか」
突然の申し出に、石森は驚くが、嫌な気持ちはしなかった、キックボクサーでありながらチャンピオンを唸らすパンチの持ち主、格闘家して興味を持たないはずはない。
石森は快諾する。
「もちろん、構わないよ」
幼い頃のとは違う、練習で相手と相対するのは、お互いを鍛える為、嫌いだから殴り合うわけではないことを、石森は当たり前に理解していた。
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