第22話 友 中編 その2
久しぶりに出会う旧友、石森は驚き、まだ言葉を探している。
それに対して櫂は1人話の始める。
「今は『平野』じゃなくて、『柊木』なんだ、転校した後、親が再婚してね」
イタズラっぽく笑う櫂に、それじゃあ気づかないというリアクションの石森。
たった数秒で2人の距離は、幼い頃に戻り、会話を重ねる。
最近の他愛のない話をや、幼い頃の過ごした日々、転校先での話等、櫂はチャンピオンになった事よりも石森が同棲している事に食いつく。
「まじで、同級生の涼香の同棲してるのかよ」
「なんで、そこに一番くいつくんだよ」
櫂にとっては、石森が世界を取ったことよりも、隠れファンの多かった同級生を射止めた事が衝撃だった。
「結構、人気ある女子だったんだぞ、それをお前は、奥手のふりして」
まったくしつこいな、そんな風に思いながら、石森は、本題に切込む。
「そんなことより、なんで今パンチを強化するんだ、あのサンドバッグ見る限り、問題なくみえるんだが」
「俺のパンチは、強いけど、どうしても中間距離を鍛えなおさないといけなくてね」
北岡兵江、櫂の出した名前に石森も眉間にシワを寄せた。
北岡は、アジアを主戦場とする、日本人のキックボクサー、彼の強さよりも別の事に注目を浴びる事が多かった。
彼は、右腕が肘から上が欠損している、隻腕の選手だからだ。
しかし、それは、彼にはハンデにはならなかった北岡は、数々のKOの山を気づき、『ラストサムライ』と呼ばれ人気の選手だ。
「北岡はどの選手にもない強みがある、奴に対抗するには近距離の攻防を制する必要がある」
石森は、真剣な表情を見せる櫂に、何かしらの因縁があるのかと思ったのだが、勘違いかもしれないとその言葉を飲み込んだ。
櫂の表情は、いつもの顔に戻り石森に提案する。
「俺が知る限りでは、お前のパンチは最強だ、お前と鍛えればあいつに勝てる、お互いに鍛えればよりまた上に上がれる、どうだ、アキラ」
石森は、断わる理由などなく快諾する。
2人で強くなるのだ、幼い頃に戻ったような気がして何故かこそばゆい気持ちになる。
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