第21話 友 中編 その1

 時はバベルトーナメント記者会見の一年前。

 

 都内のキックボクシングジム。


 端正な顔立ちをした男、櫂は、事務所で強面の男と向き合っていた。

 強面の男は、キックボクシングの会長で元キックボクサーの岩井と話していた。


 岩井はしかめっ面で柊木に話かける。

 「本気で言ってるのか」


 「ええ、国内じゃもう俺の相手はいない、より上を目指すなら海外で活躍するこの選手に目を向けるしかないじゃないですか」


 「確かに、しかしなぁ、よりにもよって『こいつ』かぁ」


 手元の記事に目を通す、岩井、気持ちが乗らないのは態度をみて明らかだ。


 「もちろん、会長、こいつを倒したら、『アルティメットユナイテッド』このトーナメントに参加して軽く優勝しますよ」


 余裕の笑顔を見せる櫂だが、アルティメットユナイテッド自体は、軽く優勝できる気持ちはあったが、その前に、資料の男が気になっていた。


 「こいつを倒すには、もっと近距離、パンチを知る必要あるよな」


 「なにか伝手でもあるのか」


 「もちろん、久しぶりだけど、俺の事覚えてると思いますよ、と、いうことでちょっと、行ってきます」


 そういうと椅子から飛んで立ち上がる、ジャージを軽く整え、ドアを飛び出る。


 「あっ、会長、拳王ジムに連絡してて下さい」



 

 石森は、午前中一度ロードワーク出でていたが、サンドバッグを叩くためジムに戻ってきた。


 次の相手は、リーチが今までの相手より長い、イメージを固めなからジムに入る。


 ジムの中では、サンドバッグの周りにはちょっとした人だかりが出来ていた。


 「なんですか、あれ」


 石森は、疑問を同じジム生に聞いた。


 「ああ、なんかキックボクシングのチャンピオンが来てるみたいですよ」


 サンドバッグの方から聞こえる強い衝撃音が、石森を納得させる。

 「この音は、キックの音か」


 ジム生はそれを否定する。

 「いえ、パンチであの音出してるんですよ、それであの人だかりです。」


 まじか、そう思って、近くによって確認する。


 近寄った石森はサンドバッグを叩いている男の姿に、目を疑った。


 そこでサンドバッグを叩いていたのは、幼い時の友人、平野櫂であった。



 「平野お前、なにやってんだ」


 振り返った櫂は、満面の笑みを見せた。


 「久しぶりだな、チャンピオン」



 意外な場所での再会に、驚く石森、そのリアクションを嬉しそうに見守る櫂。


 2人の再会は、運命の歯車をまわし始めた。

 





 

 


 

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