再会 ━キックボクシング━

第20話 友 前編


 「俺は、強くなりたい、誰よりも強くなりたい」


 顔に傷をつけ、泥だらけの少年は、土手から夕陽を見ながら呟く。


 「それって、世界最強になりたいこと」


 後に、世界チャンピオンとなる石森陽少年は、友人の櫂(かい)に訪ねかえす。


 平野 櫂は、端正な顔立ちで女子にも人気者で、その頭も良い、しかし、それは、一部の男子から僻みからか目をつけられる事も少なくなかった、キックボクシングを習っているものだから、それを理由に、上級生から喧嘩を売られることあった。


 小学生時代、格闘技をある程度齧っているより、けんかなれしてる集団の方が強い。


 何度かは、悔しい思いをする事もあった。


 お互い片親で父親がいない2人は、何故か気が合い、よく一緒に過ごす事が多かった。 


 「強くなればあんなのに舐められなくていい」


 綺麗な顔で物騒な事いうなと思うと、石森は思った。


 平野櫂は、真っ直ぐ石森に伝える。


 「やっぱり一緒にキックボクシングやろう」

 「2人で『最強』に゙ならないか」


 最も強いが2人いるという疑問をなんとなく持ちながら石森は、首を横にふる。


 「いや、おれはいいよ」


 石森は櫂のことを、親友と思っていた、一度キックの練習を見学した事がある、ちょうどスパーリングをしていて練習でも櫂を殴ることは、考えたくなかった。


 そんな、石森だが、櫂と同じように強くなりたいと思っていたし、子供の狭い世界では強さが全てのような気もしていた。


 そんな中、2人は、櫂の親の都合で転校し別れるようなる。

 

 石森はがの転校をきっかけにボクシングを始めるようなる。


 子供心に同じ道を歩めばどこかで交わると思っていたからだ。


 櫂もまた、転校先でもキックボクシングを続けた、それは、幼い頃の夢『最強』になる為に。




 それから、10年以上の月日が流れる。



 チャンピオンになった石森だが、生活は変わらずに狭いアパートで、同居している安里涼香と食事をしていた。

 

 涼香は思い出したように会話を切り出す。

 「そういえばさ、アキラ、小学の同級生の友達から聞いたんだけど、同級生でキックボクシングのチャンピオンがいるらしいよ」

 

 石森は、気のない返事で聞き返す、同級生と言っても小学生時代なら殆どが関わりのないのが殆どだ、知らない可能性が高い。


「なんて名前の人」


 涼香は、少し考えてから答える。

 「名前は、しらないけど、確か名字は柊木とかいってた」


 石森は一瞬、昔の親友櫂を思い出したが、聞き慣れない名字で少し落胆する。


 「柊木、しらないな」


 

 「そっかぁ、そりゃそーだよね、でもこっちは世界チャンピオンだから、アキラの方が強いよね」


 石森は、一概にそういう訳じゃないと伝えようと思ったが言葉を飲み込んだ。


 (懐かしい男を思い出したな)


 そう思い食事を続ける、先月チャンピオンになったが、何も変わらない、ジムには国内で防衛戦をしてもらえるように話を勧めている。


 メキシコのボクサーが、階級を落とし挑んでくるらしい、しかし、それよりも石森はひとつ不安があった、最近身体に違和感を感じていた。


 (この階級も限界かな)


 その次の日、ジムで石森は、数奇な運命の始まりを体験する事となる。


 最強のボクサーと言われる男の次なる相手は、メキシコのボクサーではなく、本人に深く絡んだ運命の糸なのだ。

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