第18話 桜 後編 その1

 相撲の強さを、そんな事を真っ直ぐ伝える、天空に横綱は、ある疑問をぶつける。


 「横綱の相撲で勝てないのに、お前の相撲なら勝てると言うのか」


 天空は、あえてはっきり伝える。


 「俺は、最強の武術と呼ばれる『修羅の戦い』をこの目で見た、体格や技術といった物だけではない何かを感じ取った」


 「勝てるとは言い切れない、だが、今の貴方を戦わせる訳にはいかない、貴方は今の相撲界の代表だ」


 埒があかないそう想い、横綱は土俵に入った、御託はいらない、お互い力士を名乗るなら力で意見を押し通すのみ、その気持ちを感じとり、天空も土俵にはいり、2人は、土俵で腰を屈め向かい合う。



 横綱は一度、天空に負けているが、それは膝を怪我し休場している時、今は違う。


 俺が負けるはずがない



 横綱と天空の呼吸があい、取組が始まる。


 横綱は、相手のブチかましを受けきり、その身体ごと押し出して試合を決める事を得意としてした、どんな相手のブチかましも、万全の自身を怯ます事はないと思っていた。


 しかし、それは思い上がりだと気づく。


 両者渾身の力でぶつかりあう、横綱は体重差で圧倒的だが、手足が長く間に入られると不利になる、一部の相撲評論家から言われていた。


 四つに組む両者、力は拮抗している、横綱の膝の古傷が悲鳴をあげていく、天空も小細工なく渾身の力をぶつける。


 以前勝ったのは万全の横綱ではなかった、今この取組こそが本当の戦いであった。


 ジリジリと天空の身体が土俵際まで追い詰められていく。

 

 横綱は、上手をとり俄然有利の体勢の状態になる、しかし、天空はまだ諦めない。


 (まだまだ)


 天空は、全身に力を入れ抵抗する、身体がそり、土俵をわろうとしていた。


 横綱は、この取組をまるで優勝のかかった千秋楽だと思えるほど、身体が高揚するのを感じ取った。


 勝負が決するのはすぐ目前だ。

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