国技の誇り ━相撲━
第16話 桜 前編
無敵の横綱、戦後最大の力士、そう言われる力士がいた。
横綱大竜関、ハワイから帰化し日本国籍をとり、2メートル、200キロの巨大は怪物の名をほしいままにしていた。
500勝を超えし、数多くの優勝を飾った超人である。
しかし、彼自身自分の絶世期が終わりに近い事を感じていた。
十代の頃、ハワイから在住している時に、スカウト目に止まり、若くして移住、日本での暮らしを始め、相撲を知り、厳しい中に日本の良さを知り、日本人妻と結婚、相撲取りとしては、横綱の人生は、まさに順風満帆そのものであった。
そんな中、彼は親方に話が、ある事を伝え料亭に呼んでいた。
「親方、忙しいなか時間を作ってありがとうございます」
料理はまだ、出されていない、横綱は親方よりも早い時間に来店し、姿勢も足も崩さず待っていた。
律儀な男だ、親方はそう想い足を崩すように伝えた。
大竜関の膝の調子は良くないこんな所で負荷をかけたくないというのもある。
「でも、一体どうした改まってどうしたんだ」
「親方不義理なのは、承知しています、しかし、お願いがありまして」
親方は、眉間にシワを寄せたなんとなく理解した、先日マスコミが発表した、ありとあらゆる格闘技に声をかけ、規模も賞金も名誉も最大のトーナメント『バベル』。
そこで、横綱の名もあがった。
「バベルトーナメントか」
横綱は黙って頷く。
「相撲界の人気は今低迷しています、若い人は相撲の関取の名も知らない、嫌、俺が横綱というのも知らないかも知れません」
「相撲は日本の国技です、俺に相撲の強さ証明させてください」
横綱は深々と頭を下げた、元々日本人でもない男にそこまで言わせてしまうことに、親方は申し訳なく思う。
「しかし、現役の横綱が格闘技トーナメントなんて出場なんて無理だ」
「引退も覚悟の上です」
親方は、その気持ちをかってやりたいと思う気持ちと、不安な気持ち両方を抱えた。
横綱大竜は確かに強い、しかし、その強さは相撲という枠組のなかだけではないだろうかと。
実際、膝の状態もよくない、逃げながら戦われたら追いつく事もできないのではないか
「引退と簡単にものをいうな、もう一つ、お前には考えなくちゃならない事もあるだろう」
「常磐天空の事だ」
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