記者会見 バベル始動

第15話 その男 格闘王

 都内のホテル、多くの記者が集まり、1人の男の帰国を心待ちにしていた。


 不況の国内で、明るいニュースは視聴者を元気づける。

 海外で活躍する日本人を見るのは、国民の喜びの1つのようだった。



 ハイブランドのスーツに、金のロレックスの時計、見るからに高そうな革靴、サングラスをかけその男は記者会見に臨んだ。


 比嘉泰王、その風格、オーラは琉球王族武術を御殿手を継承されたと言われても誰も納得してしまう物であった。


 長いテーブルの中央にゆったりと座る。


 海外ММAで無敗でチャンピオン、無差別級トーナメントでも前人未到の日本人初の優勝、エキシビションであったが海外のプロレスラーとも戦い勝利を収めていた。


 まるで、漫画のような活躍に普段は格闘技に興味のない人やマスメディアも取り上げる事となっていた。


 「でも、凄い活躍だよな、日本人でここまで海外選手を倒しまくるのは、聞いた事ないよ」


 「1年くらい前に、ボクシングで石森が統一チャンピオンになったりしたけど、ここまでも盛り上げりはなかったよな」


 「まぁ、ここまでの盛り上がりは、アルティメットが絡んでるからだろ」


 記者達はボソボソと話をしていたが、司会がマイクに向かい喋り始めると静まり返った。


 「それでは、時間になりましたので、比嘉選手の帰国会見を始めます」


 「質問のある方は、挙手でお願いします」


 1人の記者が手を上げる。


 「今回、総合の大会を辞退し、日本に帰国したのは何か利用があるのでしょうか」


 秦王は、言葉少なく答える。


 「はい、アメリカの総合に俺を倒せる奴、強さを証明できる者はいないと想い辞退しました」


 「では、国民で戦いたい選手例えば、横に座っているのはアルティメットユナイテッドのプロデューサーの方ですよね、対戦相手は優勝者の藤谷という事てしょうか」


 「彼が強いなら戦ってもよいですが、そうですね、その可能性はあります」


 歯切れの悪い答えに、違和感を感じでいた記者に秦王は本音で応える。



 「最強の男は誰か、最強の格闘技とは何か、俺は格闘王を名乗り皆に問いかけ、格闘王としての誇りをかけ強さを証明したい」


 「統一チャンピオンになったボクサー」

 「片足でありながら、最強を名乗る空手家」

 「金メダリスト柔道家」

 「裏の世界で活躍する喧嘩屋」

 「戦後最大の肉体をもつ横綱」


 「古流の武術の使い手、修羅」

 

 「高額な賞金を準備している、自薦他薦は問わない最強と思うものなら名乗りをあげてもらっても構わない。」


 「勿論、選考させてはもらうが」


 記者が、興奮し、開催時期を聞く、今は夏、年内の開催なのか、年末の大舞台が準備されるのか、疑問はもっともだ。


 「選考は急ぐが、参加させたい選手、決定には時間がかかりそうでね」


 その男は、誰か海外の選手なのかとの問い合わせに、表情を変えずに秦王は応える。


 「鏡花帝釈(きょうかたいしゃく)」


 何名かの記者が血の気が引く感覚を覚える。


 そして、この放送が生放送でない理由を知る、この名前を出すのは基本的にタブーとなっていたからだ。


 帝釈は、十五年前、暴力を家業とする者たちを素手で皆殺しにその後、自身の家族も全員殺害、捕まえようとした警察官にも、抵抗し警察官数人を退職に追い込む怪我までさせた凶悪犯。


 格闘筋の者、暴力筋の物も名前をあげず「あの男」「あいつ」などと呼ぶほど名前を呼ぶのを避けるタブー人物である。


 事件も当時はテレビで取り上げる事もなかった、秦王は、関係ないといった様子で話を続けた。


 「メンバーは、そろいつつある、しかし、帝釈がでないなら意味がない、法律の事はよく知らないが、帝釈が試合を出来るよう調整するつもりだ」


 王は伝えたいだけ伝え、記者会見を終える。




 


 

 


 

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