第6話 拳 後編 その1

 試合会場は、マディソンスクエアガーデン、格闘技の聖地で行われるその試合は、全米で放送されていたが、日本国内では、地上波はなく、一部の衛生放送のみとなった。


 控室でアップを行う石森に緊張はない、いつも通りやれば負ける事はないという絶対の自身があったし、なによりも石森自身ここは、通過点であった。


 この試合でタイトルを取り、階級を上げるつもりであった、今の階級がベストであったがより強い相手、強さを求める為に階級をあげるのは必要不可欠と思っていたのだ。


 対するノアは、控室にマスコミをよび、試合後のパーティの話をしていた。


 完成した自分に東洋人がかなう訳はない。


 それが、ノアの考えだった。



 その、30分後2人は、リング上で向かい合う。


 審判からルールの説明を聞き、お互いコーナへと戻り、始まるのゴングを待つ。


 ゴングの音と歓声が場内を包む。



 先手はノアであった、リーチで優るノアは小気味よく左ジャブで石森を牽制する。

 その左ジャブをウィービング、ダッキングを用いて回避、ノアの左手は身体に、接触する事すらないが、それでもノアは焦らず、自分の間合いでボクシングを続ける。


 守りに徹した石森だが、相手の撃ち終わりに一気に間合いを詰めるが、しかし、返しの右フック。


 石森それをガード、石森はまた、バックステップで距離を測る。


 手を出しているのは、ノアのみ、会場は圧勝を予感しボルテージが上がってくる。


 しかし、石森はそれに対し冷静にフットワークを刻む。


 (手数で押し切っても良いがそれよりも、インパクトは残したい)


 石森は、そう考えた。


 石森は、ノアの左ジャブをパーリングし、少し出きた隙に対し距離を詰めながら、右のストレートを放った。


 一瞬の間に出した右ストレートだが、体重タイミングは、完璧にノアに対し向かっていく。


 ノアは、右手でガードするがその衝撃に少し身体がよろける。


 (何か仕込んでいるのか)


 ノアは一瞬そう思うほど石森のストレートの威力は絶対であった。


 石森は追撃しない。


 ノアが体勢を崩した事に対し、会場は一瞬どよめく、ノアはダメージがない事をステップで会場に伝える。


 (所詮は、一発狙い当たらなければ)


 ノアはそう思い試合を立て直す為に、左ジャブを行う。


 『鷹の爪と翼をもつボクサー』


 その異名が石森につけられた試合は、全米に衝撃を与えるには十分な戦いであった。





 

 

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