片翼の鷹 ━ボクシング━
第4話 拳 前編
パウンド・フォー・パウンドとは、ボクシングや総合格闘技、キックボクシングなどの格闘技において全階級で体重差のハンデがない場合、誰が最強であるかを指す称号。
唯一日本人で選ばれた男がいた。
石森陽(アキラ)、バンダム級の彼がその人であった。
東京、拳王ジム。
都内でも有数の選手を抱えるそのジムにアキラは、所属していた。
男達の汗と熱気が交じるなかで、アキラは1人サンドバッグを打ち込んでいた。
ボクサーとしては、少し長めの髪を後に束ね、少し切れ目の鋭い目と、ボクサーとしては珍しい真っ直ぐ筋の通った鼻、彼自身自慢の綺麗な鼻である。
鋭いワン・ツーの轟音が彼が軽量級という事を忘れさせる。
足捌きはリズミカルな音をシューズと床で演奏させている。
ジム内にタイマー音がなり響き、ラウンドの終わりを知らせる。
アキラは、サンドバッグを離れ水を口に含み、置いてあるバケツに吐き出す。
時間は8時を指しており、アキラはもう6時間以上からトレーニングを続けて尚、まだ、スタミナを残していた。
「もう少し、ギア上げれるな」
そう呟やき、またサンドバッグに向かい練習を再開する。
『練習の鬼』
同じジムで彼以上に練習をしている者はいない、その練習から下内された実力はまさに本物である。
「アキラ、少しいいか」
会長は、そんなアキラを呼びつける。
腹の出た中年だが、昔は世界を取った事もある男だが、アキラはそれが悪い冗談たといつも思っていた。
「どうしたんですか、会長」
「試合が決まったぞ、何とラスベガスだ、メインではないが、チャンピオンとの統一戦だ」
アキラは、現在IBFチャンピオンという肩書だが、ややこしい事に同じ階級にチャンピオンが別にいる。
ベルトは3本、相手が2本を掛けて試合をすると言っているのだ。
アキラは不敵に笑った。
自分より強いボクサーはいない、それが彼の持論だ。
「で、試合はいつなんですか」
「それがなんと来週だ、間に合うか」
準備期間が明らかに短い、アキラは直ぐに理解した、あちらさんが無理難題を言ってこっちが断ったら逃げたなんだと、因縁をつけるつもりなんだと。
「大丈夫」
アキラは、簡単に返事を返す。
準備は、常にしている、相手も『ボクシング』なら問題ない。
アキラはそう思い、会長に一礼し、一度ジムから帰った。
心配も問題もない、しかし、集中は必要だ。
アキラは、色々な事は一度頭を忘れ、集中する事にした。
自宅は、古びたアパートの住む理由は、家賃の安さとジムから近い、それだけだ。
鍵は空いており、アキラは、部屋に入る。
玄関から部屋の中の殆どが見える間取りだ。
部屋の中心にあるテーブルに女性が1人、料理を並べていた。
女性は、アキラに向かい笑顔を見せた。
「おかえり」
拳 中編に続く
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