零
ベンチに座り、しばらく池を眺めていた。
遊歩道に申し訳程度に置かれた街灯も、ここまでは届かない。今夜は月も出ていないから、水面は硯に溜まった墨のようだった。油断すると池に吸い込まれそうな気がするのは、この池の伝説のせいかもしれない。
その昔、一人の少女がこの池に身を投げた。彼女は白蛇に姿を変え池の底に沈んでいった。実は彼女はこの池に祀られている弁財天の遣いで、子供のできなかった夫婦に神が寄こしたものだった。確かそんな話だった。
伝説の真偽はどうであれ、本当にそんなことがあったような気がしてくるのは千年もこの地に祀られているからだろうか。
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