全ての元凶
「この赤子がいずれ、戦争の鍵を握ることになるだろう」
「他のどの国が技術を結集させても、この個体を超える人材を生み出すことはないはずだ」
「我々のプロジェクトが成功すれば、
この当時から、彼はすでに大きな期待を背負わされていたようだ。彼はすぐに狐火軍直属の孤児院に送り込まれ、マインドコントロールを施されていった。まだICプロジェクトの全貌を知らなかった彼は、二歳半になった頃には機龍のシミュレーターにおいて好成績を叩き出していた。この頃から流暢に言葉を話していた彼を見て、プロジェクトに携わったチームは確信した。
「間違いない……架神は天才だ! すぐにでも後継機の準備に取り掛かれ!」
「了解!」
この頃から科学者たちは、架神の遺伝子をベースとした子供を作り始めた。その子供こそが、後に架神と死闘を繰り広げる
それから一年後、まだ幼かった架神を引き取ったのは、一人の未亡人の女だった。子宝に恵まれなかった彼女は、彼を女手一つで育て上げてきた。そんな二人の関係が引き裂かれたのは、架神が十三歳になった時のことである。女はたった一人の養子を守るために必死の抵抗を試みたが、狐火軍の軍人たちに銃殺されてしまった。こうして架神は狐火軍に送り込まれ、兵器として利用されてきた。
「お前らは、義母さんを殺した! それから俺は、まもなく戦場に立たされた! お前らの目的はなんだ!」
架神は憤った。そんな彼を服従させていたのは、当時二十四歳だった
「余計な詮索はやめたまえ……
「それで納得できるか! 俺はお前らの道具じゃない!」
「いや、君は道具だ。君はそのために生まれてきたのだからな」
無論、それで納得できる架神ではなかった。後日、彼はかつて自分が育てられてきた孤児院に忍び込み、先ずは情報を収集することにした。
孤児院の一室にて、架神は一冊の資料を見つけた。
「ICの軍事利用に向けた教育プログラム……? ICって、一体……」
彼がICという言葉に辿り着いたのは、この時であった。彼の中で、一つの考えがよぎった。軍隊と孤児院が癒着しているのであれば、最悪の場合、国がICとやらに関与している可能性も十分に考えられるだろう。そのことを悟った架神は、狐火国の官邸の監視カメラにハッキングした。この頃から戦闘の才能に恵まれていた彼は一人で官邸に乗り込み、護衛を次々と銃殺していった。そして彼は当時の国家元首である中年男性を拘束し、その体に独自に開発した自白剤を投与した。
「答えろ……ICとはなんだ。その詳細の書かれた資料はどこにある?」
「この引き出しの中だ」
「鍵がかかっているじゃないか。鍵はどこだ?」
尋問を続けつつ、彼は男のこめかみに銃口を突きつけていた。男は生唾を呑み、ポケットから鍵を取り出した。さっそく架神は引き出しを開け、ついにICプロジェクトについてまとめた冊子を手に入れた。
「こ……これで、私を許してはくれるか?」
「いや、お前は用済みだ。そして、このことを他言されるのも面倒だ」
「金ならある! いくらだ! いくら必要だ!」
男は必死に生にしがみついた。しかし彼の命乞いは、かえって架神の神経を逆撫でした。
「大声を出すな」
架神は男を射殺し、冊子をアタッシュケースに仕舞った。
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