支持者

 あれから翔太しょうたは、イザヨイを加速させ続けた。その道中で、無数のメタルコメットが彼の機龍に特攻を試みてきた。

羽生はにゅう様万歳!」

「羽生様万歳!」

「羽生様万歳!」

 敵機のパイロットは皆、架神かがみの熱狂的な支持者だ。無論、先程まで無数の機龍兵を相手にしていた翔太からしてみれば、メタルコメットの軍勢など敵ではない。

「邪魔をするな!」

 彼は声を張り上げ、何機かのメタルコメットをレーザー光線で撃ち落とした。それでも残る敵機は、恐れをなさずにこちらに近づいてくる。

「羽生様は全てのICの代弁者だ! お前も本当は、人類が憎くて仕方がないのだろう!」

「世界は我々の嘆きに耳を傾けなかった! 我々の苦しみと向き合わなかった! もはや話し合いなど無意味だ!」

「人類を滅ぼす……もはやそれでしか決着はつけられまいよ!」

 失うもののない彼らにとって、架神の計画は希望でしかなかった。一方で、翔太は狼愛ろあの写真を見つめつつ、イザヨイを更に加速させている。

「ダメで元々!」

 イザヨイの砲口から、一発の荷電粒子砲が放たれた。光線は一度に五機ものメタルコメットを撃墜したが、依然として残る敵勢が怯む様子はない。彼らはレーザー光線を連射しつつ、凄まじい速さでイザヨイの方に詰め寄っていくばかりだ。

「もうやめろ! こんなことをして何になる!」

 そんな彼の叫びも、架神の支持者たちには届かない。一機のメタルコメットの特攻により、イザヨイは右腕を損傷した。翔太は残る左腕に光の剣を生成し、迫りくる軍勢を斬り落としていく。無重力の宇宙空間には、無数の血肉と骸が飛び回っている。彼はその光景に見覚えがあった。

「あの時と……同じだ……」

 この時、翔太は自分が初めて戦場に赴いた時のことを思い出していた。あの当時の彼は怯えており、とても戦えるような状態にはなかった。しかし、今の彼はそうではない。

「今の僕には、誰かの命を奪ってでも守りたいものがあるんだ! 例えそれが、間違っていたとしても! 狼愛……君が望むのなら、僕は……!」

 光の剣は、眼前の敵機を次々と一刀両断していく。

「僕はこの戦いに、命を捧げる!」

 覚悟を決めた彼の最後の一振りは、光により可視化された衝撃波を生み出した。その衝撃波は残る全ての敵機を巻き込み、激しい爆発を起こした。


 一先ず、これで敵は片付いた。


 それからも翔太は、宇宙を駆け巡り続けた。コックピットに備えられているレーダーは、前方を指し示している。後はただ、ひたすら前に進んでいくだけだろう。


 やがて翔太は、巨大な人工衛星を発見した。

「これが……ジャッジメント……!」

 彼はすぐに荷電粒子砲を溜め、それを勢いよく発射した。しかし眼前の人工衛星には強力なバリアが施されており、その表面には傷一つつかなかった。直後、ジャッジメントの至る所から砲口が飛び出し、無数のミサイルやレーザーを放ち始めた。

「なっ……!」

 翔太はイザヨイを素早く旋回させ、攻撃をかわした。無敵の人工衛星を破壊できる手段は、もはやたった一つしかないだろう。

「内側から、破壊するしかない……!」

 さっそく、彼はコックピットのレバーを引いた。イザヨイは勢いよく加速し、目の前の人工衛星へと詰め寄っていく。無論、ジャッジメントは依然として自動攻撃を繰り返しているため、侵入はそう容易ではない。それでも翔太は、引き下がるわけにはいかないのだ。

「もう少しだよ、狼愛……孝之たかゆき。もう少しで、全てに決着がつくんだ!」

 すぐ目の前の人工衛星は、荷電粒子を溜め始めている。翔太は無数のミサイルを放ち、ジャッジメントから発射されたミサイルから己の身を守る。

「間に合えぇ!」

 一刻も早くその人工衛星の内部に侵入しなければ、翔太は荷電粒子砲に撃ち落とされることとなる。

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