増援
機龍兵の軍勢との戦いにより、レジェンドの装甲は徐々に剥がれ落ちていった。
「まずいな……燃料が残りわずかだ!」
いくらレジェンドが高性能な機体であっても、数多くの敵を相手にしていては燃料が不足する。一方で、機龍兵は無慈悲にもその数を増し、その場に二十体以上は集結してしまった。今の彼は、まさしく蛇に睨まれた蛙だ。この時、彼はすでに己の生存を諦めかけていた。
「どうやらオレは、もうここまでのようだ。後は頼んだぞ……
そう呟いた彼は、静かに目を瞑った。直後、周囲は轟音に包まれ、真っ白な光に覆われた。
――どういうわけか、孝之は生きていた。
彼は唖然とし、すぐに目を見開いた。彼の目の前で、無数のメタルコメットが機龍兵たちと戦っている。その光景を前に、孝之は安堵の笑みを浮かべた。
「皆、来てくれたのか」
「そうだよな。まだ、オレたちが死ぬときじゃねぇ!」
彼の瞳に光が宿った。メタルコメットのうちの一機が、レジェンドの背にホースを伸ばす。同時に、レジェンドの背にある給油口が開かれ、そこにホースの先端が差し込まれる。孝之の眼前のメーターはその数字を増していき、燃料が給油されていったことを指し示している。
いよいよ反撃の時だ。
レジェンドの右手に、光の剣が生成される。
「言っただろ、翔太! この場はオレが引き受けるってな!」
孝之はそう叫び、操縦桿やレバーをいじくり回した。この時、彼はヴァランガ軍の捕虜にされた時のことを思い出していた。
*
それは数日前に遡る。
「ヘイ、ボーイ。キミは以前、
話を切り出したのは、ジェラート少佐だった。孝之はコーラを飲みつつ、彼の質問に答える。
「ああ、翔太が騙されていなければそういうことになる。だが少なくともオレは、架神ならやりかねないと思っているよ。アイツは誰よりも先にICプロジェクトの真実を解き明かし、それをオレたちに話したからな」
この当時から、彼は今のような惨状が起きることを予見していたのだろう。ジェラートはしばし考え、彼に質問する。
「ボーイは機龍を操縦したことはあるか?」
「いや、オレはメタルコメットにしか乗ったことがねぇ」
「……それはまずいな。架神との戦いに備えるには、機龍の扱いをマスターしておく必要がある。あのボーイが具体的に何をしてくるかは、わからないけどな」
このままでは、孝之は架神との戦いで戦死することとなるだろう。
「何か策はあるのか?」
彼は訊ねた。ジェラートの返答は、至ってシンプルなものである。
「相手の出方がわからない以上、正攻法で行くしかない。キミにはこれから、機龍のシミュレーションを受けてもらう」
それが彼の出した答えである。彼はすぐに孝之を案内し、トレーニング室へと連れ込んだ。それからというもの、孝之は数日にわたって機龍の操縦をシミュレーションし続けた。
*
そして今、彼は実際にレジェンドを操縦している。
「ありがとよ……ジェラート少佐! おかげでオレも、戦えるってモンだ!」
彼はトレーニング室でのことを思い出し、機龍兵の動きを読み始めた。それからは何機もの機龍兵が、次々と撃墜されていったのだった。
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