第4話 「異世界に侵入するアルティメットニート」(成長性0ってなんですかww?)

 *


 目覚めたのは何処ともない森の深くだった。


「あれ、夢だったのかな」


 すぐ頭上を過ぎ去っていった馬鹿でかい翼竜の影が視界を通り過ぎる。


「……」


 とりあえずいつもの癖で腹をボリボリと掻こうとするが、


 あれ? 外した。


 確か俺のカワイイ出べそは丁度この辺りにあった筈だが。


「まさか……」


 飛び起きた俺はペタペタと自分の顔に触れる。

 おかしいぞ、プニプニしてない。え、ていうか小っさ! 片方の掌で顔が全部覆えるぞ!


「え、え、え……!」


 何か布のボロ切れを着ている様だが、そんな事はどうでも良い。

 俺は手近に見つけた水溜りに自分の顔を映す。


「……ほひョ」


 超絶イケメンの俺がそこに居た。

 また顔を触るが、やはりこのイケメンは俺の様だ。

 ブロンドの短髪、小さい顔にぱっちり二重。今すぐキスしてやりたい位に可愛い中性的な俺!


 ナイッス神様ww ブフゥw!


 興奮していると、向こう側を見たこともない獣が草を掻き分けて歩いていくのが見える。


 そこで俺はようやく確信する。


「異世界ッキタァァァ!!」


 天に向けるガッツポーズ。俺の喜びが見えているか神様!


 俺は本当に望み通りに、あのラノベみたいな異世界に転生していた。


「そうだ、こういうのは大概……《ステータス》!」


 すると俺の想像通りに、ゲームの様な電子画面が現れる。


「よし! やっぱり出た! よしよし……どんなチート能力が! ふひ、ふひひ!」


《ケイン》 Lv1 F

 ヒューマン

・HP 44

・攻撃力 10

・防御力 10

・素早さ 11

・MP 1000


「ケインか……基準が分からないが……え、いやでもMPヤバくないかこれ? よしよし! じゃあこのMPを活かせる魔法は何かなっと……くふふ、全属性かなぁ? ユニークスキルかなぁ?」


・魔力 10000

・魔力適正 【火】

・成長性 0

《ヒートLv1》


「は!?」


 魔力は良い……分かんないけど多分魔力は良いよ? あと適正魔法もまぁ許す。でもヒートLv1ってあれだろ? どうせド○クエでいう所のメ○だろ?


 まぁまぁ、まぁそれも良いよ


 ただ成長性0ってなんだよ! どういう意味だ?


 成長性の説明欄を開く。


《成長性が上がると、魔法のレベルアップやランクアップ、覚えられる魔法が増えます》


 俺はぷるぷると震えながら膝を着いた。


 1だったら良いよ? 良く無いけども、1だったらば少しずつでも成長する訳でしょ? 

 でも0はいけないよ! 1と0の境界はデカイよ、デカすぎるよ! 成長しないって事じゃん! 一生メ○しか使えないって事!? 


「神様……」


 どうしよう……また落ちこぼれかもしれない。あのジジイ、俺の事キモがって最後まで話聞いて無かったしなぁ。

 でも大体分かるだろ普通!? 異世界転生って事は=でチートって事だろ、あの野郎ラノベも読んだ事ねぇのかよ、学のねぇ奴め!


 うつむいていたら、空から何かが俺の頭に落ちて来た。


「げぼぉっ!」

「ミギャぁあ!」


 まだ頭の上に乗っているモノを摘み上げると、そこに小さなドラゴンみたいなのがいた。


「うわぁあ!」

「ミギィイ!」


 え、モンスター!? え、えモンスター!? え!


 テンパってソイツをぶん投げてしまった。


 ――ガサガサ


「え、え……」

「……ミ、ミギィ……」


 だけどその真っ赤なドラゴンの赤ちゃんは、まるで俺に敵意が無い様にして近寄って来た。よく見るとイカツイトカゲみたいで、背に小さな羽が生えている。


「お前、俺の仲間なのか?」

「ギィ!」


 するとそいつは嬉しそうに長い舌を出してチロチロする。


「えっと……こいつの情報は」


《???》Lv1

 サラマンダー

・HP 83

・攻撃力 150

・防御力 80

・素早さ 73

・MP 100

・魔力 100

・魔力適正 【火】

・成長性 1000

《ヒートLv5》


「え、強くね? 俺より強くね? しかも成長性1000?」


 それにサラマンダーって確か神話に出てくる火の精霊じゃ……こっちじゃ別に珍しい生物じゃないのかな?


サラマンダーが俺の足に擦り寄ってくる。何故だが既に懐かれているみたいだ。


 ――ガサガサガサガサ!!


 するとその時だった、森の奥からもの凄い勢いで巨人のゴブリンが現れたのだ!


「えひゃあっ!」

「ギぃ! ギィギぃ!」


 え、何だこいつめちゃくちゃデカイよ。しかも想像通りの緑の体に、大木のみたいな棍棒持ってる!

 しかもなんか思いっきり敵意を剥き出しにして肩を怒らせてるぞ!


「あわ、あわわ」


 俺がうろたえている横でサラマンダーが威嚇を始める。

 え、どうするの、やるの? 俺めちゃくちゃ弱いよ?


「ゴブリンキング?」


 電子画面に敵の名が浮き出てくる。そして俺はその隣にある文字に絶望した。


「Lv82!?」

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