火の転生者

第1話 「冒険(散歩)に出掛けるアルティメットニート36歳」(一世一代大博打)

【無能ボッチブサメンだった俺。ラノベの真似して格好良くトラックダイビングしたら、目論見通り異世界突入成功――「え、何時までたっても火の初級魔法ヒートLv1しか使えないんだけど……! こっちでも落ちこぼれですかw!?」―最低Fランカー冒険者らしいけど、とりあえず初級魔法で異世界凌駕します―】




 山田拓郎36歳です。

 職業ニート、趣味ニート、性格ニートのアルティメットニート。

 大学卒業後、就職活動に失敗した俺は、実家に寄生してアニメとゲームの一辺倒。

 つまりクズである。まぁ自覚してるだけマシかとは思う。


「おっ……爆乳ラ○ザップさん乙〜ww」


 カタカタカタカタ……と高速タイピングで書き込む。これが俺の唯一の特技。

 そしてオンラインゲームのチャットだけが、俺が唯一他者と関われる場所だ。

 まぁ学生の頃からずっとこんな様なもんだが。


「はぁ……」

   

 言ってて悲しくなって来た。俺だって色々考える時はある。

 ふと鏡を見ると、百貫デブのニキビ面がズレた眼鏡を掛けている。


「この年になってまだニキビ面かよ。俺がクズなのは劣性遺伝子のせいだ……うん。顔が良かったらきっとこんな事には……」


 辺りに散らばった食べさしのスナック菓子を三種、腹いせに一気に口に詰める。


「あ〜あ……異世界転生出来たらなぁ。チート使って楽勝ムーブからの、何もしてないのに好感度マックスの幼馴染とラブラブ激甘生活してぇ」


 物心ついたときから周りに虐められて来た俺。無能な俺。ブサイクな俺。

 何をやっても上手くいかない……というか努力が報われて来なかったんだ。

 周りの奴らが俺を認めないから。


 いっそアニメみたいに転生出来たらなぁって、本気で思う。


 なんか萎えたのでオンラインゲームを落ちて、真っ暗な汚部屋に大の字に寝転がってみた。

 チカチカする切れかけた蛍光灯。


 ――働け、友達を作れ、とにかく外に出ろ。


 昔は両親にそう口酸っぱく言われていたが、今はもう呆れられて何も言われない。


 うるさいんだよ……悪いのは俺じゃなくて、俺以外の全部なんだ


「もうずっと外に出て無いな。外に出たら、何か変わるのかなぁ……」


 締め切ったカーテンから光が少し漏れていた。


「男拓郎36歳、大冒険に行っちゃおうかな」


 どうしてか数年ぶりに勇者の様な気持ちになった俺は、5日間着たままだったスウェットを脱ぎ始める。

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