第12話 春風に乗る雨



雨が降る夜

翌朝の光を求め

走り出す一羽の小鳥


まだ飛べない事を悟り

滑走する


目の前にある安堵にたどり着く

そんな容易い飛行を求めずに


お前には無理だと言われる

大きな夢に向かっている最中だから


手の届くような夢に向かって

跳躍などしない


誰もが嘲笑う大きな夢に向かって飛行する

羽ばたくにはまだ早い


冷たい雨に翼を濡らし

まだ乾かない凍えた体を暖めながら

最高速度で走っている


飛ぶ事には早すぎるこの道を

この滑走路を

より高く飛ぶためだけに


誰にも無視されるような

小さな鳥は

空高く飛ぶことだけを信じて

今は未だ

誰にも届くことのできない空のためだけに


今は未だ

天空を見つめ

滑走することだけに専念する

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