鶯団子

文重

鶯団子

 よっこいしょと茶店の縁台に腰をおろす。70過ぎて幼稚園児の孫のお守りはさすがに堪える。大きなプロジェクトを抱えているとかで最近お疲れぎみの美樹に、

「週末は父さんたちが大輝を動物園に連れていってやるよ」

 なんて安請け合いをするものだから。俊雄さんも出張中でいないことだし、美樹にとっては渡りに船だったんだろうけど。


 おむすび握って電車で動物園まで。道中もはしゃぎっ放しの大輝は、園内ではさらに大興奮。後を追いかけるのに必死だった。


 まだまだ帰りたくなさそうな大輝をなだめすかして、やっと園の外に出たときには、じいじとばあばは疲労困憊。あそこで一休みしていきましょうと入った茶店。大樹はアイスがいいと駄々をこねたけど、ここだけは譲らずに鶯団子を3人前注文する。

「おいしいね」

 結局は嬉しそうに団子を頬張る様子に、私たちの目尻も下がる。

「弟か妹が来るんだよ」

 唐突な告知に、お父さんと2人笑顔の陰で小さく溜息をついた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

鶯団子 文重 @fumie0107

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ