第八夜 「コンビニ受け取り」

 現在時刻は午前零時。今宵も始まりました、冥界ラジヲ。毎週末土曜日、午前零時に始まりまして、ツラツラとね、リスナーの皆さまに怪奇ホラーや都市伝説といった巷の話題をお届けしております。


 お送りしますのはお馴染みサンゲキジゴローと、

「アシスタントのヒキザキカナメです。ねー、ねー、ジゴローさん、こないだおばぁが電話してくれてさぁ、それはいいんだけど何かヘンなこと言ってたの。」

 ヘンなことって?

「浅草寺か江戸城に行っておいでって。江戸城なんて残ってないよねぇ?」

 えーっと。皇居は知ってる?

「うん? テレビで見たことあるよ、お正月とかで一般人も見学出来るんだよね。」

 その皇居がかつての江戸城だよ。学校の授業で習ったと思うんだけどなぁ。

「えっ!? うそぉ!」

 後でゆっくり話そうか。じゃあ、今回のメール紹介いくよー。


 ペンネーム、なんかようかい?さんから頂きました。『初めまして、ジゴローさん、カナメちゃん。』はーい、初めてのメールありがとうねー。


『これは私の友人が体験した話です。彼女のバイト先は家の近所にあるコンビニで、近いこともあって時々ですが早朝のシフトを入れていたそうです。さすがに深夜シフトは危険なので入れられないそうですが、イケるのなら深夜でも働きたいタイプの女子高生です。

 友人の私から見ても相当にアクティブなヤツでして、そんな女子がある日、コンビニに来る客に一目惚れしたと報告してきたのです。』


 ほぉー。それはそれは。

 でも、え? なに? 怪談話だよ、このコーナー。どうなるの?


『友人の勤めるコンビニはAmazon便を受け付けているのですが、時々、すごいイケメンが荷物を受け取りに来るのだそうです。彼女もその話は前から聞いていたそうですが、あまり感心はなかったらしいです。ところが実際に遭遇してしまうと、一目でそのイケメンを好きになったんだそうです。

 そこで彼女は、なんとか彼にアピールしようと頑張ったそうなんですが、結局目を合わせても貰えなかったらしくて、その彼は無表情に荷物を受け取って、そのままコンビニを出てったそうです。


 それでも友人は諦めきれなかったようで、バイト仲間などに聞き込みを行い、彼がいつ頃やって来るのかを調べたそうです。それによると、夕暮れが近付き、辺りがだんだん暗い感じになって街灯が灯りだした頃や、その逆に早朝のまだ暗い時間帯などに、だいたいは一人でやって来るということを突き止めました。すごい根性だと思います。』


 確かに。見上げたバイタリティだね、応援したくなるわ。

 でもこれ怪談話だからオチが気になるけども。どうせその彼、アレでしょ?


『そして友人はついに、シフトでない日にバックヤードで張り込んで、彼の住所を突き止めることを思いつきました。バイト仲間たちに協力を仰ぎ、その人が来たら教えてもらえるように、手はずを整えたのです。』


 うわ、めっちゃ迷惑なヤツ。

「迷惑言いながらジゴローさん笑ってるし。」

 お嬢だって笑っちゃってるじゃん、ほんとすごい根性だよ、彼女。


『苦労の甲斐あって、ある日の夕方、ついにイケメンが来たと連絡を貰いました。慌ててバックヤードを出て、店を出るイケメンの後をこっそりと尾けて行ったそうです。

 彼はなんだか歩調がやたらと早いのか、店を出たと思ったらもう10メートルは先を進んでいて、友人は慌てて自転車で追いかけたんだそうです。自転車で必死に漕いでようやく付いていけるなんてその時点でいろいろおかしいのですが、恋は盲目というヤツでしょう、友人はちっとも気付かなかったようです。


 日がとっぷりと暮れて、辺りが真っ暗になった頃です。彼女はついに彼の家を突き止めました。ひっそりとした住宅街の一角に建つ一軒家がそうでした。

 彼がその古びた昭和っぽい外観の家の玄関を開けて中へ入ってしまい、玄関の照明が消えるのを見定めてから、友人は帰路についたそうです。


 しかし、翌日に改めてその場所へ行ってみたところ、そこには焼け跡しかなかったんだそうです。おまけにその後イケメンもコンビニにやって来ることは無くなってしまい、友人はひどくガッカリしていました。


 可哀想な友人を慰めたいので、ジゴローさん、番組特製ステッカーを出来たら二枚送ってください。友人の分と、私も欲しいです。』


 はーい、ありがとう。友人の彼女の分と、ご希望通り二枚送らせてもらうよ。

「ねぇ、ジゴローさん。これって彼女はフラれたって事なのかなぁ? よくある展開だったらそのまま連れてかれそうなもんじゃん?」

 さぁねぇ、彼の方で身を引いたのかも知れないよ?

「あ、ロマンチックー。そうだね、そうかも知れない。きっと人恋しくてコンビニに通ってたんだよ。だけど誰かに害を為そうだとかは思ってなかったんだ、きっと。」

 不慮の事故で亡くなった方だったんだろうね、火事かな。連れていくのは忍びないとか思ったのかもね。だからもう来なくなったんじゃない?

「そっかぁ。ペンネーム、なんかようかい?さん。そういうことだから、友人の彼女にも伝えてあげてね、きっと身を引いたんだよって。」


 今夜はなかなかイイお話を聞かせて貰えました。では、また来週。

「ばいばーい、今日みたいなちょっとイイお話募集。」


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