第4話 この世界が異世界学園モノだと気づいた件について
「王立魔法学院ですか?」
未だに聖女の力もコントロールできないというのに、思春期真っ盛りの学生の中で彼らの願望をことごとく具現化したら大変なことになりそうだ。
「教主様、それは無謀というものではありませんか?」
マカロン教主は「心配なさらず」と穏やかな顔で口にした。
「ここ半年ほどミエル様の御力を間近で拝見させていただきました。どうやらミエル様を聖女と認識していない者が願っても御力が発動することはないようです。ですから学院には聖女の身分を隠して通学されれば問題ありません」
「どうしてそこまでしてあたしを学院に?」
「ミエル様は元の世界で学生だったとおっしゃっていたでしょう? その話をされたとき懐かしそうにしていらっしゃいました。神殿には同年代の者もあまりおりませんし、なによりみながミエル様を聖女と知っておりますから気楽な付き合いができません」
どうやらマカロン教主なりのあたしへの気遣いらしい。ほんわかとあったかい気持ちになっていたら、その話には続きがあった。
「カヌレ王太子と同じ二年生に編入されてはどうかと国王陛下からご提案いただきました。王太子殿下の婚約者であるガレット公爵閣下の御息女ヌガティーヌ様も同学年です」
「カヌレ王太子、……殿下。それにヌガティーヌ様……」
頭の奥にモヤモヤした既視感が芽生え、それはむくむくと大きくなり、異世界生活半年目にしてようやく気がついた。
この世界は『お菓子な国のおかしな聖女様』だ。
聖女の作る不思議なお菓子で王国最大の懸念である魔王を改心させ、王国と魔界は友好関係を結び、聖女は王太子と結婚して末永く幸せに暮らしましたとさ、チャンチャン。って感じの短編マンガ。
ずっと追っていた長編マンガの最終巻に収録されていた作家の初期作品で、正直なところ回収されない伏線が多すぎて消化不良な読後感だった。あの時は「こんな作品収録しといて他の巻と値段一緒かよ」って思ったけど、前言撤回。
未熟な作家が伏線ばらまいてくれたおかげであたしは一筋の光明を見つけた。
作中で魔王は聖女よりも強い力を得るため七つの秘宝を集めようとする。七つの秘宝とは神の遺物。世界が七度危機に瀕し、神は七度世界に降り立ち、その度に神の力を地に残すため秘宝を置いて行ったという。神の痕跡を感知できる魔王は、おとぎ話とされる秘宝が実在することを知っていた。
神の力と聖女の力どっちが上かは明白だ。だって聖女は人間だもの。
つまり、神の力を手に入れれば聖女の力で叶わなかった願いも叶うかもしれない。元の世界に戻れるかも――。
「教主様、王立魔法学院編入のお話、ありがたくお受けさせていただきます」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます