17 麗

 ――忘れるのって、怖いよね?

 ――何よ、不意に……。

 ――いや、忘れるのが怖いのは愛おしい想いだけか?

 ――ううん。きっと、そうじゃないと思うな。

 ――ぼくの父は違ったが、職人だった祖父は段々と毀れていって、最後はご先祖様の一人になったよ。言動も心もその人に……。家系上、本当にその有名人がご先祖様の一人かどうかはわからないけどね。

 ――それって……。

 ――きみの言葉で急に思い出したから、きっと、そうなんだろうということさ。きみの言うことが正しいんだ。


 空想の旅はまだ続き、わたしに種々の季節を感じさせる。

 それは鏡花が描いた一面の黄色い菜の花だったり、ピンクのアセビだったり、白い梨の花だったり、青いオオイヌノフグリだったり、紫のシャクナゲだったり、赤いハナキリンだったりする。

 季節が巡れば、黄色いヒマワリだったり、ピンクのサルスベリだったり、白いヤマボウシだったり、青いツユクサだったり、紫のキキョウだったり、赤いザクロだったりする。

 さらに季節が巡れば、黄色いキンレンカだったり、ピンクのコスモスだったり、白いチャノキだったり、青いブルーサルビアだったり、紫のニチニチソウだったり、赤いヒガンバナだったりする。

 そして冬には、黄色いフクジュソウだったり、ピンクのカトレアだったり、白いヤツデだったり、青いアネモネだったり、紫のクリスマスローズだったり、赤いツバキだったりする。

 ああ、きれい!

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