4 恋

 ――今日は、これからどうする?

 ――あなたが暇なら一日付き合って貰おう?

 ――きみは暇なの?

 ――明日は普通に仕事だけどね。

 ――ぼくの方は代休で休みだ。しかも妻が娘を連れて里帰りしてるから、実は夜も暇。

 ――誘ってんの?

 ――まさか?

 ――じゃ、誘わないの?

 ――それも今更だな……。そもそも付き合ってた頃だって数えられるくらいしかセックスをしてないし……。

 ――不思議よね。

 ――不思議じゃないだろ? 不思議がるのは一般的な他者だ。

 ――確かに……。セックスと恋愛感情はまったく関係ないことだから。

 ――でもそれが通じないんだよね、世間では……。


 そう、それが通じないのだ、世間では……。

 恋人としての相性と夫婦としての相性はもちろん違うし、さらに言えば友としての相性だって人それぞれに違うというのに……。

 けれど――

 違うのが当たり前なのに同じを求める。あるいは同じでなければ安心出来ない。それがこの国の文化に根付いている。良いか悪いかの判断は下さない。ただ無視出来ない事実として君臨している。あるいはこの国に住まう住民すべてを覆い囲うように被さっている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る