第4話 4つめのネジは私のもの
「四つめがなかなかに見つかりませぬね。これで仕舞いなのでせうか?」
と、貴方は真っ黒なアスファルトを、何度も確認し、話した。
私の……ポケットの中に隠してしまった、貴方の大事なネジ。
返したくはなくなってしなった。
このまま返さなければ、貴方はどうなってしまうのだろうと、不安になったその時です。
「僕の頭のネジなんぞ2、3本欠けたとて、誰も気付く人もおらんのですよ。」
と、私を気遣ってか貴方が優しい声で言うのです。
顔は暗がりで見えなくても、こちらを見て微笑んでいるに違いない。
こんな優しい人の頭のネジをこっそり盗んだ私は、罪悪感を感じ始めておりました。
貴方はそれでも私を疑う事などなかった。
それどころか、何で書いているかすら分からないのだと笑う。
「実はね、僕にはれっきとした大切な人がおります。
だから、恋から愛にはしない。揶揄った訳ではないのですよ。
恋は何度落ちても恋、僕はその華の輝きが如何に美しいかを知っています。」
そしてそんな言葉を私に言ったのです。
その時、はっと致しました。だって……私がネジを取ったであろう事を知っているのです。だから恋から愛にはしないで下さいと態々言っている。
けれど、けして怒りもしないのです。
怒るどころか、その醜い私の恋心を美しく喩えて下さるなんて。
こんなにも申し訳ないと思った事は無い。
こんなにも、優しい人に出逢った事が、無い。
……そう、けして愛にはしてもらえなくても、今夜だけ愛していると思わせて下さい。
私はこの抑えきれないこの気持ちを、どうするべきか鼓動に聞いておりました。
すると、貴方はある日記を読ませてくれるのです。
小さな月明かりの僅かな光に文字を流して、日記を一緒に読ませてくれました。
内容は詩のようなものです。
……私、それを読んだ時。ほっといたしました。
ああ……、貴方をもっと愛しても良いのだと。
一冊の日記を見る私達。
貴方は私に恋をしている。一生懸命、愛にならぬようにと足掻きながら。
私の髪が触れそうになった時、ふと止まって反対を向いたのに気付いています。
どうして、抱きしめて下さらないの?
私はこんなにも貴方を愛してしまったのに。
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