第七話 魂の叫び

バスの車内を見渡してみると、確かに私たち以外は年配の男女が多いような気もする。

競艇なんてCMくらいでしか見ないし、あんなところにいる魔法少女とかロクなもんじゃない気もするんだけど。

……いや、流石にロクなもんじゃないは偏見か。


乗っていたバスは目的地に着いたようでゾロゾロと乗客がバスから降りていく。

「俺らも降りるぞ。多分、ここにいると思うんだがなぁ…」

乗客・シキに続いてバスから降りる。

降りると大きな2体の像が目の前にあり、その間にゲートがあった。


「そういえば、お前って100円玉持ってるか?」

「え?えーっと…」

シキに言われて財布の中を見ると、100円玉が数枚入っていた。

「うん、あるよ」

「そしたら後で返すから100円貸してくれないか?入るのに必要なんだ」

一緒にバスに乗っていた他の乗客もゲートのところで100円玉を入れて中に入っていた。

「じゃあ、はい」

「助かる」


中に入ると目の前にはエスカレーターがあり、そこを上るとたくさんの人でごった返していた。

こんなところに来たこともない私は右も左も分からないので、とにかくシキの後を着いていくので精一杯だった。

すると、私たちの後ろの方から

「あれ?シキさんじゃないですか?」

と、シキの名前を呼ぶ声が聞こえてきた。


シキと私が振り向くとちょうどシキと同じくらいの背丈の好青年が立っていた。

「お、レキ。そっちから見つけてくれるとはな。探す手間が省けて楽になった」

「そちらのお嬢さんは?」

「俺の相方。ハルって名前だ。お前からも自己紹介してもらえるか?」


レキは私の方を向きなおし

「どうも、初めまして!レキと言います。僕もシキさんと同じで魔法少女とペアを組ませてもらってます。僕もシキさんも佐々木さんの管轄なので多分僕のペアとも顔なじみになると思います!」


「お前の相方は?」

「あ、それならあっちに」

レキが進む方向に私たちも着いていくと

「差せー!!」「まくり差せーー!!」「逃げろー!!」

という大きな声が聞こえてきた。

どうやらたった今レースが始まった所のようで、人生をかけた人々の魂の叫びが聞こえてきた。


「すごい熱気…」

「ここにいる人は本気で選手を応援してますからね」

「で?お前の相方はどこにいるんだ?」

「いるじゃないですか。ほら、そこに」


レキは魂の叫びが聞こえてきた方の集団を指さしてそう言った。

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