第四話 え、教授も?
「やあやあやあ!ようこそ来てくれたね!」
普段の授業からは想像のつかないくらいのハイテンションで教授が話しかけてくる。
「いやー、びっくりしたでしょ!コイツはいっつもそうなんだよね。あんなに顔を近づけなくても未知のものを見たら人ってのはその反応が顔に出る。だから、あそこまで驚かせる必要もないし、周りの見えてない人まで巻き込んでちょっとしたハプニングを起こす必要もない。僕はそう考えているんだけど君はどうだろう」
更に捲し立てるように話しかけてくる教授に
「見えてないやつにまで話される可能性だってあるし、コイツが虚言癖の不思議ちゃん呼ばわりされる可能性だってあるだろうが。結局はああいう感じで何かペラペラ話される前にとりあえず部屋から出してしまえばいいんだよ。あとのことはそれから」
と、シキが反論した。
教授は、うんうんそうだねって感じで頷いて
「さて、大まかな話はシキから聞いていると思うが改めて自己紹介からとでもいこうか。私は佐々木。まあ、僕の授業を取ってるから流石に名字くらいは知っているとは思うが一応ね。そして、ここに来てもらった理由は知っているとは思うが、君には魔法少女になってほしいんだよね」
さらっと話してくる教授に
「いや!そ!こ!なんですよ!私が?魔法少女?この現代に?そんな支離滅裂な話をさらっとされて、『はー、そうですか。うん!じゃあ私、これから魔法少女として頑張りますっ!』ってなると思います!?」
と、流石に私も教授と学生の関係を一旦忘れて反論する。
またも教授はうんうんと頷き
「それはね。君がこの現代においても魔法少女の重要性が変わってないってことに気付けてないから出る言葉なんだよ」
教授はそう言いながら部屋の奥の棚から何かを取り出した。
「さて、この透明な箱。もちろんその辺にある柔い箱じゃないが、この透明な箱を見て君はどう思う?」
「何言ってるんですか…。その箱のどこが透明なんですか。なんか黒く澱んでますけど…」
「うん!大正解!これこそが魔法少女がこの現代でも必要とされる理由さ!」
教授は手に持っていた箱を机に置くと再びハイテンションで語りかける。
「厳密に言えば魔法少女じゃなくてもいいとは思うんだけど、君さ、この澱みを素手で処理出来ると思う?」
「いや、流石に無理じゃないですかね。だってまず掴みようもないし」
「そう。掴めない。要するに物理が通じない相手にどんな屈強な人間を戦わせても意味がない。だからこその魔法少女の必要性という訳だ。魔法なら幾分かはこういう奴らに対抗出来る。ってのが、僕を始めとした魔法少女側の意見って訳だ」
私と教授に掛け合いを側で聞いていたシキが話し出す。
「ただそれだけじゃあ心許ないだろってことで俺たちみたいな奴が魔法少女とセットで動かされてるってことだ。俺も元々はそいつのペアだったんだがな」
「え、教授も魔法少女だったんですか!?」
「魔法少年な。これでも20代後半までは結構頑張ってたんだけどねぇ…」
「なんで辞めちゃったんですか」
「寄る年波…ってやつかな……」
佐々木は窓から黄昏気味に辞めた理由を言ってきた」
「正直に体がもう限界って言えよ。カッコつけやがって」
シキがちょっと呆れたような感じでツッコミを入れた。
「おいおい。そうやって素直に言ったらなんかダサい感じじゃないか。こういうことはちょっとカッコつけて言った方がそれっぽくなるもんだよ」
「知らん。くだらん」
佐々木は窓から見える遠くの景色から、再び私の顔に視線を戻す。
「まあ、そういうことだよ。正直、体にガタが生まれてきてね。ちょっと限界かなって。ここらで上手く世代交代しないとってことで、いろいろな方法で魔法少女を探してるんだ」
「で、そんな時に私が見つかったと」
「そ。そういうこと。いやー、若い人は飲み込みが早くていいね」
飲み込みが早いって言うか私的には死にたくないから飲み込まざるを得ないんだけど。
「ということでね。僕が魔法少年を引退してから実質的にはシキはフリーみたいな感じになってたけど、こうやって君が魔法少女候補として選ばれたから今日からは君はシキとパートナーを組んで魔法少女として頑張ってもらってもいいかな?」
「ま、ここで断ったところで死ぬかもしれないんで、とりあえず可能な限りは頑張ってみますよ」
「うんうん。良いね。その最初から諦めきってない感じは良い感じだよ。よし。それじゃあここからは真面目な話だ。今後は基本的にはそこのシキから説明を受けてほしい。重大な話は僕からすることもあるかもしれないけど、一応教授と学生の立場があるからね」
私は隣にいるシキに目を向けると、シキも私の視線に気づいたようでこちらを向く。
「ま、そういう事だ。よろしくな」
「よろしく」
「うんうん。仲が悪くなさそうで良かったよ。それじゃあ、春さん。魔法少女として頑張ってね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます