宇宙うさぎとカニクリームコロッケ

かきぴー

宇宙うさぎとカニクリームコロッケ

ある日、地球に宇宙人が漂着した。


いや正確にいうと宇宙人ではない。

それらは「人」ではなかった。


白い毛並み、長い耳、赤い瞳、丸っこい体。

それは地球で言うところ「うさぎ」と言われる生物に酷似していた。

ただし、それらの大きさは、うさぎと異なり異常なほどに大きかった。


小さい個体でも車ほどの大きさがあり、大きな個体になれば、ビルと並ぶほどのサイズだった。

それらは、アフリカの小さな村に落ちた隕石から生まれ、約1ヶ月ほどでアフリカの木々を食い尽くした。

人々がそれに気づいた時には、すでに時遅く、アフリカの大多数の地域に宇宙うさぎが広まってしまっていた。

しかし、宇宙うさぎたちの侵攻に対して、世界中で緊急対策が取られた。ある日、日本の研究所に呼び出された研究者・田中は、宇宙うさぎの生態調査を行うことになった。


田中は研究所で手渡された特殊なスーツを着用し、宇宙うさぎが蔓延する地域に降り立った。歩を進めると、木々が倒され、巨大なうさぎの糞が至る所に散乱していた。


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そんな中、田中は小さなカフェを見つけた。入ってみると、そこには地元の人々がいた。そして、カウンターでカニクリームコロッケを作る、美しい女性がいた。


彼女はその場に似つかわしくないほど美しかった。

金色の長い髪、キラキラと輝く青い瞳、透き通るような白い肌。

黒いタイトなドレス、妖艶な笑顔、全てが似つかわしくなかった。


田中は、彼女に見惚れつつも、カフェの席につき、コーヒーを注文した。


「ホットコーヒーを一つ」


すると、彼女は答えた。


「ごめんなさい。ここにはコーヒーはないの。でもカニクリームコロッケならあるわ。」


「ではそれで」


田中は言われるがままにカニクリームコロッケを注文した。


田中がカニクリームコロッケを待っている間、他の客はみなそれぞれがカニクリームコロッケを食べていた。

すると突然、外で大きな地響きが聞こえた。

客たちは慌てて店を出ようとするが、彼女は田中を引き留めた。


「落ち着いて。あなたがここにいる理由を知っているわ。」


驚く田中に、彼女は続けた。


「宇宙うさぎたちは、あなたたちの持つ『想像力』を狙っているの。彼らは、あなたたちが生み出すアイデアを奪い、自分たちの力にしているのよ。」


田中は、その言葉に驚き、そして、何かを悟ったような気がした。


そんな中、店の外からもう一度大きな地響きが聞こえてきた。

そして、宇宙うさぎたちが現れた。田中は、彼女の言葉を信じ、思い切ってカニクリームコロッケを宇宙うさぎたちに投げつけた。すると、彼らはカニクリームコロッケに夢中になり、田中たちはそれを利用して、宇宙うさぎたちを退治することに成功した。


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ふと気がつくと、田中は森の真ん中にいた。

田中の前にはよろよろと歩く男が1人おり、後ろにも同じようによろよろと歩く男がいた。

2人とも、同じような白いボロボロの服を着ていた。よくみると、田中は長い列の中におり、山の中を歩いているようだった。

田中は、何が何だかわからなかったが、列から外れるとまずい、と直感的に思い歩き続けた。


実際どのくらいの時間がたったのか、田中にはわからなかった。

ただ、長い時間歩いた後、森を抜けた。そこにはウサギの耳の生えた金髪の女性が数十人、輪を成して集まっていた。

彼女たちは一様に、フリルのついた白いドレスを纏い、手にはにんじんを握っていた。

田中は何が起こっているのか、理解できずにいたが、彼女たちの目には興奮が宿っていた。


「やったわね!新しい仲間が増えたわ!」と、金髪の女性が歓声を上げた。


そのとき、彼女たちの後ろにいた男性たちが、黒いスーツを着て田中に近づいてきた。


「私たちは、ウサギ達の秘密組織です。あなたには重要な役割があると思います。」と言われ、田中は驚きを隠せなかった。


その後、田中は彼女たちに連れられ、ウサギの秘密基地に案内された。

基地の中は、フリルがついたドレスを着た女性たちや、ウサギの耳の生えた男性たちであふれていた。


「田中さん、私たちと一緒に地球を救ってください!」と、金髪の女性が熱く語りかけてきた。

田中は、金髪の女性の勢いに負けて、ついうなづいてしまった。

すると金髪の女性は、口が裂けるほどに口角を上げて、笑顔を浮かべた。


「コレデ、ケイヤクセイリツデスネ」


田中は背筋に嫌な感覚が走るのを感じ、逃げ出そうとしたが、周りにいたスーツを着たウサギ耳の男性たちに取り押さえられた。

田中は逃げようと、必死に抵抗し、暴れたが、ウサギ耳の男性たちは異常な力を発揮して田中を地面に組み伏せた。


金髪の女性はそれをみると、満足げにうなづき、こういった。


「あなたは今からカニクリームコロッケになるのです。あなたは人間の中でもとても賢い。あなたのような人間を素材に作ったカニクリームコロッケは、さぞかし美味しいことでしょう。私たちは、あなたのような賢い脳みそを持つ人間を溶かして、カニクリームコロッケを作っています。そしてそれを食べることで、より大きく成長するのです。」


気付けは、目の前の女性以外の、ウサギ耳をつけた女性たちや周りにいたウサギ耳をつけた男性たちも姿を消し、大量の宇宙うさぎだけが残っていた。


田中は、なんとか活路を見出そうと首を回し、周囲を見渡した。

さっき列をなしていた、他の人々は姿を消していた。その代わりどこからともなく、カニクリームコロッケの匂いが漂っていた。


「さぁ、あなたもカニクリームコロッケになるのです」


そうやって、金髪の女性が田中に手を伸ばしかけた時、大きな声が響き渡った。


「そこまでよ!!」


そこにいたのは、カフェで見かけた黒いドレスを着た金髪の女性であった。

金髪の女性は、自信たっぷりに歩み寄ってきた。


「あなたたちは何をしているの? こんなことをするのは許せません!」


金髪の女性が怒りを込めた声で叫ぶと、周囲の宇宙うさぎたちが騒然となった。


「クロエさん、どうしてここに?」


黒いドレスの女性に話しかけた田中に、クロエはにっこりと微笑んだ。


「私は、宇宙うさぎたちに優しく接するために、この星に来たの。でも、こんなことが起こっていたなんて……。」


クロエは周囲を見回し、田中を取り押さえるウサギ耳の男性たちに向かって厳しい口調で言い放った。


「あなたたち、何をしているの? 人を襲って、カニクリームコロッケを作るなんて、許されることではありません!」


ウサギ耳の男性たちは、クロエに対して抗議するつもりはなさそうで、恐る恐る引き下がっていった。


クロエは、田中に手を差し伸べた。


「大丈夫、あなたを助けてあげるわ。」


田中はクロエの手を握り、立ち上がった。クロエは、周囲にいる宇宙うさぎたちに向かって話しかけた。


「あなたたちは、これ以上人を襲ってカニクリームコロッケを作ってはいけません。人間と仲良くして、平和に暮らすことが大切です。」


クロエの言葉に、宇宙うさぎたちはひとつずつ頷き、自分たちの間違いに気づいたようだった。


「ありがとう、クロエさん。本当に助かりました。」


田中は、クロエに感謝の言葉を口にした。


「いいえ、私も人助けができて嬉しいわ。でも、もうこの星には戻らない方がいいわね。」


クロエは、田中を引き連れて森を抜け、彼の元の世界に帰るための手続きを手伝ってくれた。田中は、クロエに感謝しながら、安堵の気持ちで帰路についた。


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目が覚めると、田中は自宅のベットの上にいた。


「ああ、あれは夢だったのか」


今思うとひどく頭の悪い夢だったな、と田中は独りごちた。

宇宙うさぎという発想も荒唐無稽だし、調査にいったアフリカの村でクロエがカフェを開いていたのも謎だし、宇宙うさぎたちがカニクリームコロッケを作ろうとしていたのも意味がわからない。

そもそも突然森に行ったのはなんだったのか、クロエの話から推察するに、あそこは地球ではなかったのかもしれないな、などと田中は夢について思いを巡らせた。


「少し疲れているのかもしれないな。次の休みは、温泉でも行こうか」


田中はそう言いながら、いつものように身支度を整え、職場である大学へ向かった。

大学に着くと、いつもより職員たちが騒がしいのが目についた。


「どうしたんだい?」


田中は手近な職員に声をかけた。すると、職員はこういった。


「ああ、田中教授。どうも、アフリカの方で変な生き物が発生しているらしいってニュースが、SNS上で流れていまして。写真なんかもアップロードされていたんですが、うさぎによく似てるんですよね。田中教授って、生物のクラスを担当されていましたよね?こういう大きなうさぎっているんですか?」


田中は職員の話を聞きながら、先ほどの夢を思い出した。


「夢だと思いますが、確かにうさぎに似た生き物がいたという話は聞いたことがあります。ただ、そんなに大きなものは聞いたことがありません。もしかしたら、現地の人々が見たものとは違うかもしれませんね。とにかく、これを機に生物のクラスでもう一度復習しておく必要がありますね」と田中は答えた。


そして、田中は教室に向かい、生物のクラスの準備を始めた。

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