第4話
「へぇ~、じゃあ穂波君と仲直り出来たんだ。良かったじゃん」
マナト君との間にいつの間にか出来ていた誤解を解いた翌日、早速私は心配してくれていた沙月ちゃんに事の顛末を話していた。
前回告白を失敗していたために、二人で話し合っての解決は相当先の話になると思い込んでいたらしい。想像以上に安堵して、その豊満な胸をなで下ろしていた。流石に私のこと舐めすぎ。私だって話し合いぐらい出来ます~。私への認識を改めてくださ~い。……ついでにその胸を分けて下さ~い。
「……ほんとに、あのみすずが即解決出来るなんて……。成長したのね――」
目に涙を浮かべながら、私の成長を喜ぶ友達に対して何て声かければ良いですか?
てかこの子、私のことなんだと思ってるんだ。
「沙月ちゃん……。私は貴方の子どもじゃ無いですよ?」
「もうほとんど子どもみたいなもんだよ! 勉強教えて、運動するときコーチして。いっぱいみすずの面倒見てきたよ……」
…………手間のかかる娘ですみません。
「毎日毎日進展の無い恋バナ聞かされてたのにさ、それがようやく一歩前進したと思うと……涙だって出るよ」
「多大な苦労をおかけしました」
深々と頭を下げて謝罪する。改めて振り返ると、沙月ちゃんにお世話になりっぱなしだ。今度スイパラに連れて行ってあげよう。
「それで?」
「ん? それで、とは……?」
「仲直りしたんだから次でしょ。デートにでも行きなさいよ」
「でででででででででデェトォ⁉」
で、で、デートなんて。デートなんて恋人がするモノじゃ無いですか!
「何驚いてんの。一緒におでかけでもって意味なんだけど。幼馴染みだったら何回か遊んだことぐらいあるでしょ?」
「あ、あるけど……デートだなんて考えてないし……」
私の成長に感動して涙していた沙月ちゃんの顔がドンドン無表情になっていく。感情が消え去っていく。
「ハァ……それでこそ貴方よ」
「だだだって! デートなんてカップルがするモノじゃん! 私たちはまだそんな関係じゃ無いもん!」
「まだ、ねぇ」
先程まで無表情だった顔が愉快そうに歪む。ニヤニヤと擬音が鳴り方なほどニッコリ笑顔を見せている。表情豊かだなぁ。
「ま、いいや。みすずのペースでゆっくり距離詰めて行けば良いか」
「ようやく分かってくれましたか、友よ」
そう。誰もが異性と距離を簡単に詰められるわけじゃ無い。もし私がそんなこと出来るのなら、この恋を10年以上拗らせること何て無かっただろう。私は私。恋愛もゆっくり、私に出来る範囲でやっていけば良い。
そんなガラにも無いことを考えていると、ポケットに入れていたスマホから通知音が鳴った。
確認してみると、マナト君からメッセージが届いていた。
何か用事だろうか。そう思って送られてきたメッセージを確認する。
「――!」
「ん? どうしたの、そんな驚いた顔して……。ちょいと失礼」
スマホの画面を見て固まる私を不審がって、沙月ちゃんも画面を覗き込む。そしてゆっくりと顔を微笑むと、私に向けて生暖かい目を向ける。
「良かったじゃん、みすず」
マナト君から送られてきた『良かったら今週の日曜、一緒に映画に行かない?』というメッセージ。
彼からしたらなんて事無い、ただの遊びの誘いかも知れない。
けれど、けれども。
意識してしまっている私から見れば、これはまごうこと無き、デートへのお誘いだ!
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