第2話
「で、どうだった? ちゃんと言えた?」
「え…? 昨日のこと……?」
「そう! 放課後告白する~、って話だったでしょ? その続きを聞きたいのじゃ」
「あ、あぁ…。あれね。えっとね」「うんうん!」
「――…すき焼き食べました」「は?」
空気が凍った。お互い何も言わず、何も動かない。沙月ちゃんは私の言葉を理解しようとしてるんだるけど、こっちは昨日の事なんてもはやどうでも良い。危機的状況なんだ。
荷物を整理し終え、椅子に座りながらチラリと前にいる沙月ちゃんに目を向ける。
上石沙月。おっとりとした目、ゆるふわな雰囲気をしたのんびりした子。誰にでも優しいし、花壇の水やりのために朝早くから教室にいる。さらに非常に可愛い顔で、カーディガンの上からでもわかるほど立派に実った果実も持ち合わせている。
顔良し、スタイル良し、性格良しと持てる要素しかもっていない完璧超人。あ、あと料理も出来るんだよね。この前クッキー焼いてきてた。これが美味いのなんの。店開けるレベル。
「どうせ……」
沙月ちゃんがようやく口を開いた。
「どうせ途中で日和って『好き』を『すき焼き』とか言ったんでしょ?」
「せいか~い」
「やっぱり………」
ため息交じりにそう漏らす。その声は呆れ半分。…いや100%呆れだな。
「言いたいことはたくさんある。けどその前に、みすず」「ん~?」
「なんかあった?」「え? なんで?」
「暗い。いつものバカ元気が感じられない」
「バカって……。うん、でも正解」
「で、何があった」
「――…てくれる?」「ん?」
「き゛い゛て゛く゛れ゛る゛~?」
「うるせぇ涙ぐんで近づいてくんじゃねぇ」
ぐいっと私の顔をを遠ざけながら悪態をつく沙月ちゃん。嫌な顔をしても、結局は寄り添って話を聞いてくれるとっっても優しい私の親友!
私はそんな親友に、今日、さっき起こったことを話すことにした。
◇ ◇ ◇
「はぁ? 穂波君に避けられてる???」
「うん……」
「おっけ、ちょっと待っとけ。とりあえずあいつ絞めてくるわ」「まってまって!」
腕をまくり、教室を出ようとする沙月ちゃんを全力で止める。この子なら本当にやりかねない!
今になって思えば、マナト君と違うクラスで良かったかも知れない。こうして友達に相談できるし、実害が出る前に止めることが出来るし。…まぁ当時はクラス替えを担当した教師を死ぬほど呪ったけどね。あれはあれでいい思い出だ。
「心当たりはなんかないの?」「ない、です」
「おーけー絞めるわ」「だから待ってよ!」
「じゃあどうすんだよ! 原因がわかんなかったらずっと避けられたままだぞ⁉ それでいいのか!」
「いいわけない……、いいわけないよ!!」
「……じゃあどうするんだよ」
沙月ちゃんは怪訝そうな顔をしながら席に着いた。もうマナト君を絞めに行く気はないようだ。よかった。
――いや、よくない。まだ
けど、私のやるべき事はわかってる。私がやらなければならない事だ。
「――私が、するよ」
「え?」
「私が、直接聞いてみるよ」
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